オオバアコウ
 2005年7月に、アコウを紹介している。そのすぐ後に、名前も見た目も似ているオオバアコウという樹木があることを知った。が、『沖縄の都市緑化植物図鑑』にも『緑化樹木のしおり』にもオオバアコウの記載が無く、両者の違いが不明。『沖縄植物野外活用図鑑』に載っていたが、「葉の大きさが違う」というだけで、どの程度違うのか不明。
 『沖縄植物野外活用図鑑』には、オオバアコウの方言名がウシク、アコーとあって、これはアコウの方言名と同じである。ということはつまり、ウチナーンチュはアコウとオオバアコウを区別していないということになる。よって、私もウチナーンチュなので、両者を区別しないこととし、長い間、オオバアコウの存在を無視していた。
 ところが最近になって、『沖縄大百科事典』にアコウとオオバアコウの違いが記載されているのを発見する。「アコウとは隠頭花序の大きさ、果柄の長さ、葉の側脈の数などで区別できる。」とあった。そういう違いがあるのなら調べてみようという気になる。
 アコウとオオバアコウのどちらが大きくて、長くて、数が多いのかということまでは記載が無い。で、インターネットに頼る。それによると、果柄の長さは不明だったが、花序はアコウの方が大きく、側脈の数はオオバアコウが多いとのこと。それと、熟した果実の色にも違いがあった。アコウは熟すると黒紫色になり、オオバアコウは白色とのこと。

 5月31日、雨模様の中を出かける。「何という情熱」と自画自賛しながら、以前にアコウの写真を撮った金城ダムへ行き、じっくりと観察する。果実の何割かは黒紫色をしている。アコウに間違いない。しかし、果実が小さくて白色をしたアコウに似た樹木は見つからなかった。翌日、首里城公園、翌週、末吉公園も散策したが見つからなかった。
 6月8日、末吉公園を散策した翌日もまた、オオバアコウ探しに出かける。「何という情熱」と再度、自画自賛しながら浦添大公園を散策する。
 アコウの大木が数本並んでいる場所で、その内の2本が、樹形も葉も他のものと変わらなかったが、果実を見ると「小さく白色」であった。他のものは文献の写真で見るアコウの果実だ。これだ、間違いない。やっと見つけた。「やったぜ!」と思う。
 しかし、私の友人の多くはウチナーンチュなので、アコウとオオバアコウの違いを語って自慢したとしても、おそらく、「だから何!」と言われるだけであろう。

 オオバアコウ(大葉赤秀):公園
 クワ科の常緑高木 分布は沖縄島、八重山諸島、他 方言名:ウシク、アコー
 アコウにとても似ていてアコウより葉がやや大きいことからオオバ(大葉)とつく。アコウという名前の由来については資料が無く不詳。アコーという沖縄の方言名がそのまま和名になったと思われる。方言名はウシク、または、ウスクガズマルともある。ウシクは『沖縄大百科事典』に薄久という字が充てられているが、意味は不明。ウスクガズマルは『沖縄の都市緑化植物図鑑』に「石垣に生えるガジュマルという意味」とあった。
 岩だけでなく他の樹木にも着生する。根を勢い良く伸ばし、元の樹木を覆い、枯らすこともある。で、シメコロシノキ(絞め殺しの木)という別名がある。
 分布は沖縄島、八重山諸島の他、台湾、ニューギニア、東南アジアなど。
 高さは20mほど、傘状の樹形となる。陽光地、湿潤を好むが、乾燥にも強い。気根を発生するが、ガジュマルのように支柱根にまでは成長しない。果実は他のイチジク属と同じく無花果、熟すると径8ミリ前後の大きさで、白色になる。
 学名、オオバアコウはFicus caulocarpa Miq.
    アコウはFicus superba Miq. var. japonica Miq.
 
 実
 →アコウとの比較
 記:島乃ガジ丸 2008.6.8  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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