オヒルギ
 ヒルギは、沖縄にオヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギの3種があるとのことで、それはだいぶ前から私も知っていた。しかし、それらは名前も見た目も、生えている場所も似ていて、どれがどれやら判別できないでいた。倭国ではほとんど見られない沖縄の特色ある植生の代表であるマングローブ、地球環境にとっても大切なマングローブ、それを形成するヒルギは、ガジ丸HPで一等最初に紹介すべきものであったのだが、どれがどれやら判別できない(勉強を怠ったせいだが)まま、遅れに遅れてしまった。

 2007年2月、南城市佐敷の海岸にハマジンチョウの写真を撮りに行った。その海岸にヒルギも生えていた。ヒルギはちょっとした群落を作っていた。「おー、ラッキー、ここでヒルギの写真が撮れる。わざわざ遠くに出かける手間が省けたぜ。」と、全体、葉、果実の写真をいくつか撮る。いくつか撮ったが、それがオヒルギなのかメヒルギなのか、はたまた、ヤエヤマヒルギなのかは皆目見当がつかない。
 文献の写真で見る限り、全体の姿はオヒルギもメヒルギもよく似ている。雄なら雄らしく、雌なら雌らしく何か特徴があるに違いないと説明文を読む。
 特徴があった。オヒルギの花色は赤で、メヒルギは白。オヒルギは地表に呼吸根を出すが、メヒルギは出さない。全体の大きさ、葉の大きさもオヒルギの方が大きい。佐敷にあったヒルギは花の時期では無かったが、その他の特徴からメヒルギであると判った。
 今年2009年7月、大東島の旅でオヒルギを見つけた。オヒルギは、開いては無かったが赤い蕾をつけていた。そして、全体も葉も確かにメヒルギより大きかった。
 ちなみに、まだ写真の撮れていないヤエヤマヒルギは、全体的にはオヒルギに似るが、花の色は白。耐潮性の強さはヤエヤマヒルギ、オヒルギ、メヒルギの順で、陸に近いところからメヒルギ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギと層を成すとのこと。

 オヒルギ(雄蛭木・雄紅樹):海浜緑化
 ヒルギ科の常緑高木 奄美以南、熱帯アジア、などに分布 方言名:ウーピンギなど
 名前の由来については資料が無く、不明。蛭木、紅樹という字は広辞苑にあった。蛭の生息する場所に多い木ということだろうか?その広辞苑にヒルギは、「オヒルギ・メヒルギ・オオバヒルギなどの総称」とあって、本種はその一つのオヒルギ、オヒルギの花は赤いので、紅樹については納得できる。別名をアカバナヒルギと言う。
 沖縄の各地に自生がある。その土地土地で呼び名があるようで、方言名はいくつもあって、ウーピンギの他、ピニキ、ビギピニキ、ギオプシキなどとある。
 高さは10mほどで、自然に良い樹形となる。樹形は根元に特徴があり、地表に呼吸根を出す。呼吸根は湾曲し人の膝のよう(屈曲膝根)に見える。
 種子も独特で、胎生種子と言い、樹上で種子が発芽する。発芽した種子は落下して地上に突き刺さり、そのまま根を出し繁殖する。結実期は4月から7月。花色は赤、開花期は晩春〜夏。分布は上記の他、ポリネシア、オーストラリアとなっている。
 河口の汽水域に自生し、その性質から海浜地緑化、海岸保全などに利用される。樹皮は黒褐色でひび割れる。学名は、Bruguiera gymnorhiza (L.) Lam.

 蕾

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2009.10.24  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
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