モクマオウ |
101番目に紹介する沖縄の草木はモクマオウ。ガジ丸のライバル、モク魔王の名前であるからという理由だが、ライバル関係は物語の中だけの話で、植物としての両者には何の争い事も無い。ガジュマルが育つところにはモクマオウも育つ。 遠くから見ても近くに寄っても針葉樹に見えるモクマオウだが、広葉樹。葉に見えるものは細い線状の茎(→写真)で何節にも別れている。1節は約1cm前後の長さで、茎を引っ張ると節からすぐに切れる。古くなった茎は風に吹かれて節が切れ、落ちてしまう。 海水浴場の砂地に多くのモクマオウを見ることができる。海岸でのキャンプの際、モクマオウの林の中にテントを張ることも多い。モクマオウの落ち葉(上述のようにじつは葉ではないが、ここでは葉ということにする)は柔らかいので、それをテントの下敷きにする場合もある。季節を問わずモクマオウの葉はよく落ちる。風の強い日には食べているご飯の上や、飲んでいる泡盛の中にも落ちてくる。料理中にも落ちてきたりするので、高校生の頃のキャンプだったか、1度、モクマオウチャーハンを食わされたことがある。 米軍基地の中にモクマオウは多い。アメリカ人たちはモクマオウを刈り込んで、頭部を丸や四角の形にしたりしている。アメリカ人にとってモクマオウは見慣れた植物で、扱いにも慣れているようである。そのこともあって私は、今の今までモクマオウはギンネムと同じく、アメリカ軍によって戦後持ち込まれた植物だとばかり思っていた。それで、ガジ丸のライバルとして最適ではないか、モク魔王という字も良いし、と、それを思いついた自分の感性にとても満足していた。「どうだい」と密かに威張ってもいた。が、しかし 文献を調べたら、モクマオウが沖縄に入ってきたのは今から約100年も前のこと。しかも、アメリカからでは無く台湾から。さらにしかも、導入したのはアメリカ人では無く日本人、黒岩恒(ひさし)という沖縄の自然界の学問に大きな功績を残した高知の人。 黒岩恒という名前も今回初めて私は知ったのだが、黒岩という名の学者がいたことは知っている。クロイワという名はカタツムリにクロイワオオケマイマイ、植物にクロイワザサ、蝉にクロイワゼミ、クロイワツクツク等があり、特にクロイワツクツクは馴染みの深い蝉で、方言名でジーワといえば、ウチナーンチュなら多くの人が知っている蝉である。 10月頃キャンプに行くと、モクマオウの林の中でもジーワジーワとクロイワツクツクの鳴き声が聞えてくる。ゆったりとしたリズムなので煩いとは感じない。かえって、鳴き声が小さい場合には、「あー、夏も終わりだなあ」と少し寂しい気分になったりする。 モクマオウ(木麻黄):街路・公園 モクマオウ科の常緑高木 原産分布はオーストラリア 方言名:モクモー 方言名にはモクモーの他にメリケンマツともある。モクマオウは明治以降に持ち込まれた外来種。当時、外国といえばアメリカが有名だったのでメリケンとなったのかもしれないが、1908年に台湾から導入されたと文献にはある。マツとは見た目で判断してのことで、上記にあるように、針葉樹に見えるが広葉樹。したがってマツとは種が遠い。葉に見えるものは細い線状の茎。葉は退化してごく小さい。 台風の通り道である沖縄で真っ直ぐ上に伸びる樹木は少ないが、直幹性。同じ直幹性のフクギ同様、モクマオウの材も緻密で固い。強くなければ真っ直ぐ伸びることができないということなのだろう。潮風にも強く、海岸の防風防潮林としてよく利用されている。 アメリカ軍基地の中にも多く植栽されている。文献には高さ20mとあるが、基地の中に30m近いのではないかと思われる大木がある。別名トキワギョリュウ。 なお、本文に名前の出たクロイワツクツクは、「沖縄のセミ」で紹介している。 花 実 茎 節 |
記:島乃ガジ丸 2005.3.26 ガジ丸ホーム 沖縄の草木 |
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行 |