ミツヤヤシ
 結婚間近の友人Yは顔が大きい。小顔流行りの昨今ではもてないタイプである。でも彼は、がっしりした筋肉質タイプの体をしているので、全体的にはまあまあバランスが取れているといっていい。乳牛ではなく、闘牛の牛といった感じ。
 離婚間近の友人Mも顔が大きい。彼もまた、小顔流行りの昨今ではもてないタイプである。でも彼は、ぽっちゃりした脂肪質タイプの体をしているので、全体的にはまあまあバランスが取れているといっていい。食用の白豚といった感じ。
 かくいう私もまた顔が大きい。同じく、小顔流行りの昨今ではもてないタイプである。さらに私は、どちらかというと痩せて(身長170、体重60)いるので、全体的なバランスが取れているとは言い難い。痩せていて顔が大きいというのは、動物にはなかなかいなくて、喩える動物も見つからない。まあ、まねきん猫といったところか。
 江戸時代は、歌舞伎役者の人気者がそうであったように、顔の大きいことは良い事であったようだ。小顔が流行りだしたのも最近のことであろう。そのうちまた、大顔のもてる時代がやってくるに違いない。それまで生きていればいいんだが・・・。

 ヤシの仲間は小顔(葉の部分を顔と見立てて)が多いのだが、今回紹介するミツヤヤシは珍しく顔の大きいタイプ。でも、幹が太く、それなりの高さもあるので、上下のバランスは取れていると思う。友人Yのようながっしりタイプと言って良い。なわけで、ミツヤヤシはウチナーンチュにもてている。あちこちの街路、公園に多く使われている。

 ミツヤヤシ(三ツ矢椰子):街路・公園
 ヤシ科の常緑中木 マダガスカル原産 方言名:なし
 幹からの葉の出方が、上に向かって3方向に列を作って出ているのが特徴。そこから三ツ矢という和名となっている。
 他の多くのヤシは全体的に子分数、最近流行りの小顔、つまり、全体的には葉の占める部分が小さいのであるが、ミツヤヤシはでっかい顔の歌舞伎役者といった風。人間としては女に持てない形かもしれない。が、樹木としてみれば、バランスの取れたカッコいい姿である。沖縄へは比較的新しく(1970年頃)導入されたヤシとのこと。
 高さ5mほどに留まるので民家の庭にも使える。ただし、上述したように葉の広がりは高さに比べて大きい。周りに邪魔とならないような場所を選ぶ。陽光地を好む。
 記:島乃ガジ丸 2005.12.20  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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