メヒルギ
 大学生の頃だから、もう30年ほども前のこと、小浜島出身の友人Yの里帰りに便乗して、初めて八重山を旅した。石垣島、竹富島、小浜島、そして、西表島を巡った。それぞれの島で、それぞれ印象的な経験がいくつもあった。とても楽しい旅であった。
 いくつもあった印象的な事柄の中でも特に記憶に残っているのが、マングローブ。西表島で浦内川を船で上った時に見た。私は感情を表に出すタイプではないので、同行の友人Yは気付かなかったかもしれないが、いたく感動していた。圧倒される緑の迫力だったのだ。「すごい緑量!まるでジャングルだ!」と心の中で叫んでいた。
 確かな記憶では無いが、マングローブという名前は以前から知っていた。が、それは植物の名前だとばかり思っていた。マングローブとは、「亜熱帯や熱帯の河口・潮間帯の泥地に発達する特異な植物群落。ヒルギ科などの高木・低木から成り・・・」(広辞苑)のこと。マングローブを形成しているのはヤエヤマヒルギ、オヒルギ、メヒルギなどいくつか(ヒルギ科以外も)の植物であることを、たぶん、この時に知った。

 マングローブは地球環境保護のためには大切な植生らしい。そんな大切なものが沖縄にある。西表島のマングローブほど規模は大きくないが、沖縄島にもあちらこちらにマングローブがある。倭国には見られない景色がそこにある。私も、何度も見ている。
 いかにも沖縄らしいヒルギ、何度もお目にかかっているヒルギ、最近になってやっとオヒルギ、メヒルギの区別がつくようになったので、紹介できることになった。ちなみに、ヤエヤマヒルギについてはまだ不明。

 メヒルギ(雌蛭木・雌漂木):海浜緑化
 ヒルギ科の常緑高木 鹿児島以南、南西諸島、熱帯アジアに分布 方言名:ピニキなど
 名前の由来については資料が無く、不明。蛭木という字は広辞苑にあった。蛭の生息する場所に多い木ということだろうか?広辞苑には紅樹という字もあったが、これは、花の赤いオヒルギを指しているものと思われる。別の文献に漂木という字があった。漂う樹、海に漂うということだろうか?正確なところはこちらも不明。
 別名をリュウキュウコウガイ(琉球笄)と言う。コウガイ(笄)とは「髪をかきあげるのに用いる具」(広辞苑)とのこと。おそらく、果実の形が似ているのであろう。
 沖縄の各地に自生がある。その土地土地で呼び名があるようで、方言名はいくつもあって、ピニキの他、プシキ、インギー、ピシキなどとある。
 高さは5〜10mほどで、自然に良い樹形となる。種子はオヒルギと同じく胎生種子、樹上で種子が発芽する。発芽した種子は落下して地上に突き刺さり、そのまま根を出し繁殖する。結実期は4月から7月。花色は白、開花期は初夏。
 河口の汽水域や穏やかな海岸に自生し、その性質から海浜地緑化、海岸保全などに利用されるが、他のヒルギに比べると耐潮性が弱いので、河口域に向く。
 オヒルギとの違いは花色、花の付き方、根の形状(オヒルギは支柱根がある)、葉が小さく先が丸いなど。学名は、Kandelia obovata Sheue, H.Y.Liu et W.H.Yong

 花

 実

 根
 →参考(メヒルギとヤエヤマヒルギ)
 記:島乃ガジ丸 2009.10.24  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
inserted by FC2 system