マテバシイ
 たくさんの植物や動物の写真を撮っているが、当然ながら、私自身はそれがどこの場所であるか概ね覚えている。忘れている場合でも、写真の日時と日記を照らし合わせて場所を特定できる。しかし、他人の写真となるとそうはいかない。
 参考にしている図鑑の写真には地名を明記したものもあるが、那覇市とか浦添市とかいった大雑把なものなので、その樹木の存在する場所は特定できない。しかし、稀には、写真の背景を見て、そこがどこであるか判る場合もある。
 『新緑化樹木のしおり』にマテバシイの写真がある。それが、場所がどこであるか特定できるものの一つ。なので、このHPを始める前から、私はマテバシイを知っており、どこに行けばその写真が撮れるかも判っていた。その場所はまた、繁華街にあり、少なくとも年に2、3回はその近くを通っている。それでも、永らく紹介できずにいた。
 私ののんびりした脳味噌は、その近くを通っても、マテバシイのことを思い出さなかったのだ。去年の夏、「よし、今日はマテバシイの写真を撮りに行くぞ。」と、それを第一の目的としてその場所へ出かけ、やっと写真を撮った。
 写真を撮って、改めて図鑑を読み直す。「結実期は10月から11月」とある。マテバシイの実は、いわゆる「どんぐり」である。これはぜひ写真に収めなきゃあと、その時決意した。ところが、のんびりした脳味噌は、それをすっかり忘れてしまっていた。

 マテバシイ(馬刀葉椎、全手葉椎):公園
 ブナ科の常緑高木 九州から南西諸島に分布 方言名:クダン、ドゥングリギー
 名前の由来、てっきり「待てば椎」だと思っていた。「幼木の頃は取るに足りない雑木だが、成木になれば椎の木のように立派になる」ということかと。
 馬刀葉椎、全手葉椎という字は広辞苑にあった。本種の葉は手の平形では無いので、全手葉は「手の平大の葉」ということかもしれない。馬刀、「馬の刀?」と思ったが、広辞苑を見ると、マテガイ(馬刀貝)のこととある。葉の形がマテガイに似ているのかもしれない。マテガイを見たことが無いので、正確なことは不明。
 別名をマテバガシと言うが、シイ(椎)もカシ(樫)も本種と同じブナ科、日本の広葉樹林を形成する樹木。果実はどんぐりで、方言名のドゥングリギーはその意味。
 高さは10〜20mになる。狭い民家の庭には使いにくい。公園の景観樹や緑陰樹に向く。よく陽の当たる肥沃地を好む。萌芽力が強く乾燥にも強い。
 花は黄褐色であまり目立たない。開花期は5月から6月。果実は堅果(どんぐり)で、そのまま炒って食用となる。結実期は10月から11月。

 葉
 記:島乃ガジ丸 2008.12.30  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
inserted by FC2 system