クロツグ
 元模合(言い訳のできる飲み会)仲間のUが、ドラゴンフルーツ栽培を仕事にするために、勤めていた会社を辞めたのはもう1年以上も前のこと。甘さが足りなくて、さほど人気の無いドラゴンフルーツだが、彼は甘さを増やす栽培法を発見し、その特許出願もしたとのことであった。しかしながらその後、彼の活躍を聞かない。
 先日、もうすぐオジー(爺さん)になる友人Hから聞いた話は、彼の店の客で、ウチナーンチュにさんざん騙されて、何千万も損をしたというヤマトゥンチュ(倭人)がいて、その人が今、八丈島(か、どこかその辺)でドラゴンフルーツ栽培を業とし、まあまあ成功しているとのこと。砂地栽培をしたら、従来のものより糖度が増したとのこと。
 Uの、特許出願をしたドラゴンフルーツの栽培法も、ひょっとしたら砂地栽培を基本としているのではないだろうか。彼と八丈島の人とどちらが先なのか気になる。
 ところが、ドラゴンフルーツはサボテンの一種で、元々が砂地に自生しているものである。砂地でこそすくすくと健康に生育するのである。それを土に植えて、「あんまり甘くないや」などと言う方が、じつは間違っていたのかもしれない。元々あるように育てていけば、元々あるように美味しい果実ができるのであろう。自然が先なのである。

 さて、どっちが先かという話では、クロツグという植物も不思議なのである。クロツグはヤシの一種なのであるが、見た目、それとほとんど変わらない種に、コミノクロツグという植物がある。クロツグに比べて果実が小さいからそういう名前なのだが、学名では、元々はコミノクロツグが先にあって、クロツグが後から命名されているようなのである。そうであるならば、コミノクロツグをクロツグとし、クロツグはオオミノクロツグとするべきだと思うのだが、どういうわけで、そうなったのかは不明。

 クロツグ(譏P・譏P子):公園
 ヤシ科の常緑中木 原産分布は奄美、琉球列島、台湾など 方言名:マーニ、マニン
 沖縄に自生するヤシの木の一つであるが、参考にしている文献にはあまり詳しいことは書かれていない。クロツグという名が何に由来するか不明で、方言名の意味も不明。
 高さ3mなのに、葉の長さも3mある。根元から3メートルの長さの葉が株立ちのように広がるので、狭い場所への植栽は不向き。
 花には強い芳香があるという。開花期は6月から9月。
 シュロ(棕櫚)の毛で作った縄をシュロ縄といい、同じ毛で作った箒をシュロ箒というが、クロツグからも黒い繊維が採れ、シュロ縄と似た縄、シュロ箒に似た箒を作る。

 実

 毛



 コミノクロツグ(小実譏P):公園
 クロツグと学名がほぼ同じで、性質も同じ。クロツグに比べ実が小さいということだけが異なる。そこから“小実の”クロツグとなっているようだが、学名を見ると、コミノクロツグが先にあって、クロツグはコミノクロツグの変種のようである。
 コミノクロツグ Arenga tremula Becc.
 クロツグ Arenga tremula Becc. var. engleri

 クロツグの実の対比
 左手前がクロツグ、右向こうがコミノクロツグ
 記:島乃ガジ丸 2005.12.20  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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