ククイノキ
 職場の庭に、葉が桐の葉のような形をしている大きな木がある。私がこの職場に勤めるようになったのは20年ほども前のことで、私の記憶には定かで無いが、同僚のKさんに訊くと、その頃からその木はそこにあり、その頃から既に大きな木であったようだ。
 記憶に定かでないその木が気になるようになったのは、このホームページを始めるようになってからだ。植物に深く(それまでは浅かった)興味を持つようになってから、「この木、何の木、気になる木」になったというわけである。
 職場の庭はわりと広い。広い庭に雑然といろいろな植物が植えられてある。これまでにその大半を紹介しているが、未だに正体不明のものがいくつかある。葉が桐の葉のような形をしている大きな木もその一つ。Kさんに訊けばすぐに判るのだろうが、何とか自分の力で明らかにしてやろうと思って、訊かずにいたのである。
 私は観察力が大雑把である。物事はだいたいで捉えることができれば良いという性質を持っている。つい最近アコウとオオバアコウの違いを紹介したが、そういった細かな違いの確認というものは、じつは、私にとって重労働となっている。重労働は、しょっちゅうはできない。なので、その植物が何物かを調べる際は、判別しやすい情報をできるだけ多く必要とする。花が咲いている、実が付いている、などである。
 ところが、職場の、葉が桐の葉のような形をしている大きな木はこの4年間、ちょくちょく観察していたが、いっこうに花も実もつけない。よって、ずっと判別不能。
 ところが、末吉公園を散歩している際、職場のその木とそっくりな木を見つけた。運の良いことにその木には名札が掛けられていた。ククイノキとあった。

 ククイノキ(くくいのき):公園
 トウダイグサ科の常緑高木 マレーシア原産 方言名:ククイ
 ククイはハワイ語とのこと。ハワイでは古くから調味料や油用に栽培され、ハワイ州の木になっているほど有名。アブラギリの仲間で、別名をハワイアブラギリと言う。また、大きな種子が採れることからククイナットとも呼ばれる。
 果実は球形で径5センチほど。中には1〜2個の種子があって、油脂を多く含み、ろうそくとして利用できることからキャンドルナッツと呼ばれている。種子はろうそくの他、石鹸、塗料にも用いられる。また、調味料としても使われる。
 『沖縄植物野外活用図鑑』に、高さ10mとあったが、末吉公園にあるものの内、大きなものは10mを楽に越していた。幹直径は40センチほどあった。成長は速く、大木となるので民家の庭には不向き。耐潮風性が強いので防潮林に使える。
 小さな白い花が総状に多く付く。開花期についての記載が文献に無かったが、ネットのいくつかのサイトには夏から秋とあった。しかし、末吉公園で私が見た個体の一つは4月に既に咲いており、4月に既に果実を実らせていた。別の個体の多くは6月の初め頃から花を付けている。それらも果実はその前から付いている。別の個体のいくつかは、4月には既に多くの種子を根元に散らばせていた。よって、沖縄では開花期の期間も、結実期の期間もそれぞれ長いのだと思われる。果実は球形。
 種子は、油脂、石鹸、塗料の他、調味料にも利用されるとのこと。ただし、『沖縄植物野外活用図鑑』によると、生は有毒らしい。

 花

 実
 →参考(硬い種子で風鈴を作る)
 記:島乃ガジ丸 2008.6.19  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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