カシワバイヌビワ
 かつて沖縄には七五三なる儀式は無かった。少なくとも私が子供の頃には無かった。私の年代が親になる頃から流行り出し、現在は大いに行われている。
 七五三は無かったが、十三祝いというものが盛んに行われた。女子が数え十三歳になった時に祝う。「生理も始まって、大人になった」という意味だと思われる。七五三は広辞苑に記載があるが、十三祝いは無い。沖縄だけのものかもしれない。
 桃の節句や端午の節句は、ひなまつり、子供の日という呼び名ではまあまあ行われた。ただ、雛人形を飾り、菱餅やひなあられを食べる、菖蒲湯に入り、柏餅を食べるなんてことは、少なくとも我が家では無く、他所の家に行って、そういったことをやっている場面に遭遇したことも無い。いつもよりはお菓子を食えたかな、くらいである。
 柏餅を初めて食べたのは大学進学で東京に住むようになってから。記憶は定かではないが、たぶん、自分で買って食べている。時期になるとスーパーにそれが売られていた。憧れの柏餅だった。ゴワゴワした感触の葉っぱだったと覚えている。

 沖縄には柏の木が無い。あのギザギザでゴワゴワした葉っぱを沖縄では見ることができない。ただ、それに似た葉はある。ゴワゴワはしていないが、柏の葉のように大きく、ギザギザしている。その名もカシワバイヌビワ(柏葉犬枇杷)と言う。
 カシワバイヌビワの葉で餅(他の食物も)を包む話は聞いたことが無い。沖縄で餅を包むと言えばサンニン(ゲットウ)の葉である。旧暦12月8日はムーチーという伝統行事があり、その日にサンニンで包んだ餅を食べる。私は柏餅よりずっとこっちが美味しいと思う。サンニンは良い香りがするのだ。今年のムーチーは正月にあたった。

 カシワバイヌビワ(柏葉犬枇杷):公園
 クワ科の常緑高木 熱帯アフリカ原産 方言名:なし
 名前の由来、資料は無いが、葉の形がカシワ(柏)に似ていて、イヌビワ(Ficus属)の仲間だから、で間違いないと思う。英語名はFiddle-leafという。fiddleはバイオリンのことで、「バイオリンの葉」という意味になる。和語では柏の葉に似ているが、英語ではバイオリンの形に葉が似ているということ。別名をカシワバゴムノキというが、ゴムノキは本種やイヌビワと同じFicus属、Ficus属は和名で言うとイチジク属となる。
 高さは10mほどになる。陽光地を好むが、耐陰性もあるので室内観葉植物としても利用される。乾燥に強く、成長は速い。萌芽力が弱いので軽剪定とする。
 花は他のイチジク属と同じく無花果(果実の中にある)で、8月から9月につく。葉は大形で、形がカシワ(柏)の葉に似ている。採種期は9月から10月。
 ちなみに、カシワ(柏)はブナ科の落葉高木。

 葉
 記:島乃ガジ丸 2012.1.13  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
inserted by FC2 system