フクギ
 15年ほど前、有機農法を学びに知人の畑に一時通っていた。彼女の農法は完全無農薬有機栽培で、なおかつ自然農法。あまり耕さない、水を撒かない、雑草もあまり抜き取らないという農法。ニンジン、ジャガイモ、シマラッキョウ、その他を学んだ。
 そんなある日、橋を作ってくれないかと彼女に頼まれた。農道と畑との間に排水用として幅1m、深さ50cmほどの溝が掘られてある。それまで杉の足場板が数枚渡されてあったのだが、それが腐れかけていて危険なので新しい橋を架けようということなのだ。彼女の友人の所へ行き、新しい橋の材料としてフクギの丸太を数本貰ってきた。
 フクギの丸太は伐採されてからずいぶん時間の経ったもので、もう既に十分に乾燥していた。直径20cmくらいの丸太を4本並べて溝の上に渡し、両端を叩いて土の上に固定する。その上に2cmほどの厚さの杉板を打ち付けていく。釘は、杉板は軽く突き抜けるが、フクギの丸太に達するとしだいにその進行速度を緩めてしまう。2寸(約6cm)の釘が半分ほども身を沈めた辺りになると、釘はそれ以上なかなか沈んでいかない。乾燥したフクギは非常に堅く、ハンマーが釘の頭に真っ直ぐ落ちず、ちょっとずれると釘が曲がってしまう。十本以上も釘を曲げて、3、4回の悲鳴をあげて、ようやく橋は完成した。
 フクギは成長が遅いので、材の繊維が密になり、堅いのだ。水分を含んでいる間はまだいいが、乾燥してしまうと繊維がさらに縮まり、鉄のように堅くなってしまう。コンクリート用の釘を使えばいいんだよと、後日、木工家の知人に教わった。

 本部町辺りでは屋敷の防風林となっているでっかいフクギを見ることができる。あれだけ大きくなるには長い年月が必要で、歴史を感じさせる。また、すらっと伸びたフクギの立ち並ぶ姿は見た目もとてもきれい。ただ、フクギには大きな実が大量について、その実が熟し、落ちて、腐ると、周囲がハエだらけになってしまうという欠点もある。
 果実の女王と呼ばれるマンゴスチンもオトギリソウ科フクギ(ガルシニア)属。ガルシニア属の果実は食料となるものが多いらしいが、残念なことに沖縄にいっぱいあるフクギの実は、前に紹介した同じフクギ属のテリハボクの実と共に食えないのである。

 フクギ(福木):生垣・防風・防潮林
 オトギリソウ科の常緑高木。原産分布はフィリピン。方言名:フクジ、プカズィキー
 耐潮風性が強いので海岸、屋敷の防風林として多く用いられている。実が落ちてハエがたかると書いたが、結実期は8月から10月。その間、枯葉を掃除するようにたまに掃除するようにすれば何の問題も無い。本部町のフクギ並木はきれいに掃除がされている。
 見るほどの価値は無いが開花期は5月から6月。幹が真っ直ぐ伸びるように根も地下へ真っ直ぐ伸びる。深根性で直根性ということ。したがって移植は難しい。
 陽光を好み、成長は遅い。樹皮からは黄色の染料がとれ、紅型に用いられる
 仲里村(現久米島町)真謝のチュラフクギは県の天然記念物に指定されている。

 花
 記:島乃ガジ丸 2005.2.8  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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