フカノキ
 もう三十数年前の話だが、大学生活が始まる直前に私は恋をして、アタックして、フラれて、心が砕け散っていた。砕け散った心は砕け散っていることを認めたくなかったようで、その後、約一年間、私は今で言うストーカー行為みたいなことをやっていた。彼女の家の前や彼女の通う大学の前で待ち伏せたりしていた。はっきりとは記憶にないが、夏休みに入る前には諦めることとなった。「NO!」とビシッと言われたのだ。
 その後、「諦めなくては」と決心し、ストーカー行為も止めたのだが、失恋による心の傷は相当深く、長い間、私は腑抜け状態であった。そんなこんなで、私の大学一年目は心が行方不明のようになっていて、学問などまったくやる気の無い状況にあった。

 以上の話が今回紹介する植物フカノキと何の関係があるのかと言うと、フカノキの名前の由来を考える際、鱶、府下、富家などの他、不可という言葉も思い浮かんだからだ。不可は、私にはとても馴染み深い文字。失恋の傷が癒えるのに2年を費やした。よって、大学一年と二年は大学へ行かなかったり、行ってもボーっとしていることが多かった。そのため、私の成績は一年も二年もほとんど「不可」ばかりであった。当然、留年した。

 フカノキ(ふかの木):公園
 ウコギ科の常緑高木 九州南部、沖縄、アジア東南部に分布 方言名:アサグル
 フカノキの名前の由来は資料が無く不明。ノキは「の木」であろうがフカが解らない。鱶、府下、富家などと考えてみたが、鱶(鮫の類の大きなもの:by広辞苑)と結びつくところは無いし、府下だとしても「首里王府の近くに多くあった」という歴史は無いみたいだし、富家として「金持ちの家に多くあった」と考えてもいいが、本種はヤンバル(沖縄島中北部の通称)に普通に生えているので、金持ちが望むほどのものでも無い。
 高さは5〜15m。 山林内に多く見られる。私の住む近辺、街中では同属のヤドリフカノキを多く見る。ヤドリフカノキはシェフレラホンコンとかホンコンカポックとかいう名前で観葉植物として有名。本種はヤドリフカノキに似ているが、全体に大型で、葉の大きさがずっと大きい。小葉が6〜8枚集まって掌状複葉となる。幼木の葉は掌状複葉に変わりないが、小葉はたいてい深く切れ込んでいる。
 枝先に花序を出し、緑白色の花を多数つける。開花期は11〜1月。果実は熟すると黒褐色になる。材は、指物や下駄などに利用される。ちなみに学名、
 フカノキSchefflera octophylla Harms
 ヤドリフカノキScheffelera arboricola Hayata
 ハナフカノキ(ブラッサイア)Schefflera actinophylla(Brassaia actinophylla)

 花

 葉
 記:島乃ガジ丸 2012.1.2  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
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