ハゼノキ
 知合いの木工家Mさんとはここ4、5年会っていないが、10年ほど前までは週に2日以上は顔を合わせていた。主に週末、彼の木工所に通って木工の技術を教わっていた。
 熱しやすく冷めやすい私は、3年ほど続いた木工の趣味も10年前に終わっており、その後はMさんとも年に数回、会うか会わないかとなっていた。ここ4、5年まったく会っていないのは、4、5年前に彼が木工を辞めて、その木工所からも消えたからである。
 噂であるが、3回目の浮気がばれて(過去2回のことは本人に聞いている)、ついに女房から離縁され、仕事も減って、生活が苦しくなり、木工家としては生きていけなくなったとのことである。タクシーの運転手をしているんじゃないかということである。
 まあ、そんな悲しい話は、ここでは関係ない。

 Mさんの木工所の裏手には墓地があり、境界のブロック塀の傍、2、30坪ばかりの広さは雑木林となっていた。その雑木林の中に大きなハゼノキが1本あった。
 Mさんは木工所に犬を1匹飼っていた。犬に(猫にも)興味の無い私は、その犬の種類が何というのか知らないが、人懐っこい小型の犬であった。
 ある日、木工所を訪ねると、私にも懐いていたその犬がいない。
 「どうしたの?食ったの?」と私が訊くと、笑って、
 「今、病院だ」とMさんは答えた。
 「交通事故?」
 「いや、このあいだ、裏の林で犬を遊ばせていたら、翌日、犬の体全体にふきでものができたんだ。どうも、ハゼノキに被れたらしいのだ。」
 愛犬家の皆様、犬も漆被れするみたいです。お気をつけ下さい。

 ハゼノキ(黄櫨・櫨・梔):公園
 ウルシ科の落葉高木 本州以南、沖縄、他に分布 方言名:ハジ・ハジギ
 別名リュウキュウハゼ、またロウノキともいう。ロウノキは蝋の木で、この実から木蝋が採れることから。もう一つのリュウキュウハゼは、ヤマハゼと区別するための名前らしい。木蝋を採る技術が中国から琉球を経て伝わったことからとある。
 ウルシ科の植物なので、ウルシ同様ひどく被れる人もいる。よって、庭木にはあまり向かない。紅葉する木として有名だが、亜熱帯の沖縄でも紅葉する。
 高さは10mほどになる。初夏に黄緑色の小さな花を咲かす。樹皮は染料となる。

 花

 葉

 紅葉
 記:島乃ガジ丸 2006.3.12  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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