ベンガルボダイジュ
 私はスポーツ観戦の趣味が無い。若い頃はプロ野球も大相撲も好きで、ラグビーやマラソン、高校野球、オリンピックなども好きで、それらのテレビの中継もよく観ていたのだが、今はもうほとんど観ない。プロ野球なども今はニュースで見る程度。その程度でも昨年は阪神タイガースがセリーグの優勝チームであることは知っている。
 従姉の息子と、彼の才色兼備の女房は何故だか知らないが、二人ともタイガースファンである。亭主はもちろん沖縄生まれ、女房の方は茅ヶ崎産である。それなのにタイガースファン。前回、3年前だったか、阪神が優勝した時に、「一緒に祝いましょう」と声を掛けていただいたが、「興味が無い」と言って、丁寧にお断りした。
 従姉の息子夫婦は二人とも優しい顔立ちをしていて、トラのイメージからはほど遠いのであるが、タイガースファン。ダメトラだった時からの一途なファンらしい。もしかしたら、優しい二人は、強いはずであるトラが弱かったから好きになったのかもしれない。ダメ呼わばりされるトラに同情したのかもしれない。同情は愛の始まりというし。

 トラといえばベンガルトラという名前が思い浮かぶ。ベンガルというと、ベンガルボダイジュの名前が浮かぶ。もう十年以上も前のことだが、首里の鳥堀から儀保にかけての街路樹の1本に奇妙な幹の形をしたものがあって、「あれは何ですか」と知人の造園家に訊いたことがある。その人によると「幹が支柱を包み込んで奇妙な形」となったらしい。樹名はベンガルボダイジュ。で、私はベンガルボダイジュを知っていたのである。

 ベンガルボダイジュ(べんがる菩提樹):公園
 クワ科の常緑高木 原産分布はインド、熱帯アジア 方言名:なし
 ベンガル(Bengal)はベンガルトラで有名だが、インド大半島北東部の地域名であり、その辺りに産するからベンガルとつく。インドボダイジュとは同属で、樹形や葉脈の出具合などがよく似ているところからベンガルボダイジュとなったと思われる。
 幹や枝から多数の気根が出て、枝から出た気根が地面に達すると、それはやがて支柱根になる。そういった支柱根が増えるとどんどん横に広がっていき、1本で森のようになるらしい。インドのカルカッタ植物園には樹冠周囲約300mの巨大木があるとのこと。
 ガジュマルがそうであるように、本種もまた、幹や幹近くの枝から出た気根が伸びて幹を覆い、地面に達すると幹の一部になって、モコモコした幹の形状になる。街路樹で、そうやって幹を太らしていき、支柱を巻き込んでしまった姿のものを見かける。
 高さは20mほどになる。陽光地を好み、成長は速い。耐潮風性が強く海岸近くの植栽にも向く。葉脈のはっきりした光沢のある大きな葉がきれい。傘状の樹形となり、緑陰樹に適する。果実は小さく、形はイチジクに似ている。樹脂はワニスの原料となる。

 葉

 幹

 斑入り種
 記:島乃ガジ丸 2006.1.2  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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