ヨルガオ
 京都の人の会話
 「これからお寺さんへ参りますが、ご一緒にいかがどす?」
 「へぇー、せっかくのお誘いですが、別の用がありましてな、今日はご一緒できまへんのですわ。すみませんなあ。」
 「いえ、いえ、気にせんでおくれやす。」
この「気にせんでおくれやす」に、京都の人の心の細やかさが感じられる。誘いを断って申し訳なく思っている相手を慮っての、「気にしないで」なのである。
 それに対し、沖縄の人の会話
 「これから飲みに行くけど、一緒にどう?」
 「行かない。」
 「あ、そう。じゃあまた。」
あっさりしている。沖縄の人がみなあっさりしているわけでは無いが、少なくとも私の周りの会話にはこういったものが多い。少なくとも「オマエこそがその代表だ」と私の周りの友人たちは思っているだろう。よく言えば「あっさり」、「しつこくない」であるが、実際のところは、言葉のやり取りを面倒臭がっているだけである。
 言葉のやり取りを面倒臭がる私は、恋愛が苦手である。恋愛が苦手なので恋愛小説も苦手である。多くの人が絶賛する『源氏物語』も、教科書に載っている部分以外を読んだことがない。こんな手紙を出して、そんな言葉をかけて、あーして、こーして、などというのが煩い。「えーい、鬱陶しい!やりたかったらやりゃあいいだろ!」と思う。

 ヒルガオ科のヨルガオはユウガオと誤称されることもあるらしい。ユウガオはウリ科、干瓢の元になる野菜。『源氏物語』にヨルガオという名は出てこないが、ユウガオは出てくる。夕顔と漢字で書くと品のある名前となる。『源氏物語』の舞台は京都。品のある名前が似合っている。言葉のやり取りをする恋愛もまた、京都に似合っている。

 ヨルガオ(夜顔):フェンス・パーゴラ
 ヒルガオ科の蔓性多年草 熱帯アメリカ原産 方言名:不詳
 花が夕方から咲き、翌朝にはしぼむ。つまり、夜、花が咲くところからヨル(夜)とつく。アサガオ(朝顔)、ヒルガオ(昼顔)、ユウガオ(夕顔)、ヨルガオ(夜顔)などという名前の植物がそれぞれあるが、おそらく日本で古くから栽培されていたアサガオが最初に認知された顔であろう。本種は朝顔と同じヒルガオ科サツマイモ(Ipomoea)属。ヒルガオも同科同属。ユウガオだけはウリ科。
 広辞苑に「園芸上は一年草」とあったので、「あー、園芸植物か」と思ったのだが、原産地では多年草で、亜熱帯の沖縄でも多年草となり、野生化しているのもあるとのこと。
 アサガオ型で大きな純白の花は夕方に開いて、翌朝にはしぼむ。花には芳香がある。開花期は7月から11月。
 サツマイモ属であるが、本種は食料にはならないらしい。

 花
 記:島乃ガジ丸 2007.2.2  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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