シラタマカズラ
 このHPを始めてから、植物の本(動物の本も)に目を通す時間が格段に増えた。本をパラパラと捲り、写真を見ている。おそらく同じ本をどれも10回以上は最初から最後まで目を通している。目を通してはいるが、記憶能力の落ちた私の脳味噌は、その多くを記憶に留めない。情無いことである。ただし、植物の中には際立った特徴を持ったものがあって、そういった植物に限っては、私の脳味噌でも覚えていてくれる。
 シラタマカズラもその一つ、その果実に特徴があり、名前も覚えやすい。仕事で名護市辺野古へ行った時、その山中で発見した。すぐにそれだと判った。
 シラタマカズラはウチナーグチ(沖縄口)でワラベナケサーと言うらしい。「童を泣かす物」といった意味であるが、「果実に味が無く、食べた子供が美味しく無いと言って泣くから」といったようなことを、何か(参考文献として明記しないといけないかもしれないが、何だったか忘れてしまった)で読んだ覚えがある。しかし、その理由では説得力に欠ける。味の無い果実を持った植物は多いし、苦い味の果実を持った植物も多くある。苦い味の方がよりワラベナケサーという名に相応しい。そこで、この名前には別の理由があるのではないかと思い、今回はちょっと頑張って調べてみた。
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』に、家庭の燃料が薪だった頃、子供が薪拾いに使わされる。薪を集めて縛る際にシラタマカズラの蔓を使うと、蔓が弱いのですぐ切れる。で、子供泣かせと言う、といった内容のことが書かれてあった。これには説得力がある。

 シラタマカズラ(白玉葛):地被・法面
 アカネ科の常緑蔓性木本 本州中部以南、沖縄、他に分布 方言名:ワラベナケサー
 球形の果実が枝先に多く付き、熟すると白くなって、よく目立つ。蔓性の植物であることからシラタマカズラ(白玉葛)という名前。ちなみに、カズラ(葛)とは蔓性木本の総称で、その形態には巻きつる型、絡み付き型、ほふく型、着生型、吸着型などがある。
 山地に自生していて、山道の傍でよく見かける。蔓から吸着根を出し、モノにくっついて伸びていく。樹木の根元から幹を這っているのを見るが、蔓の這い付く力はそれほど強くないようで、樹木の上部までは行かない。地面を這っている部分が多い。
 5月から7月にかけて小さな白い花が咲くが、花より果実に観賞価値がある。結実期は11月から2月。その名の通り白い玉が多く枝先につき、きれい。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2006.1.18  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著・発行
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