サクララン
 金曜日の職場がオープンした頃、社長兼店長である従姉に、店内を飾る鉢物の選択とそのデザインを任された。店は、天井までが高く、4m近くある。背の高いアレカヤシを1鉢メインに置き、それより少し低いベンジャミンを2鉢離れた場所に置き、目の高さほどのパキラを5鉢、空いた空間に並べ、後は足元を飾る観葉植物をいくつか置いた。
 それで十分と思った私であったが、従姉から注文、というか文句が来た。
 「あんた、花物が全然無いじゃないの。」と言う。花物は、開店祝いで蘭の鉢物などがいくつか来るであろうと予想していたので、敢えて置かなかったのだ。
 「それはそれよ。そういうのとは別に、もう少し華やかにしてよ」とのこと。あんまりいろいろな花でごちゃごちゃした感じになるのも、元来質素で控えめな私としては好みじゃないので、一種類一鉢だけを飾ることにした。園芸店でホヤという名の花物を選び、それを店の片隅にそっと飾った。可愛らしい花であった。
 開店後、友人の多い従姉はたくさんの鉢物、盛り花をプレゼントされた。ホヤの居場所が無くなって、ホヤは外に出され、入口前の飾りとなった。それから数日後、ホヤはさらに追いやられ、店の花壇に置かれ、放ったらかしにされた。しばらくはそこで、可憐な花を咲かしてくれていたが、数ヵ月後、枯れてしまった。
 可愛い花のホヤであるが、私にはそんな悲しい思い出しか無い。

 サクララン(桜蘭):フェンス・パーゴラ・鉢物
 ガガイモ科の常緑蔓性木本 原産分布は九州南部、沖縄、他 方言名:カミサシバナ
 花がサクラに似て、葉がランに似ているのでサクララン。小さな花が密集して咲き、玉状となるところからマリラン(毬蘭)という別名もある。園芸店ではホヤ・カルノーサ、あるいは、単にホヤという名前で鉢物として出回っているが、ホヤは学名の属名。方言名のカミサシバナは、髪に挿す花ということ。
 吸着型の蔓植物で、茎は匍匐するように伸びて、節から根を出して広がる。葉はベンケイソウ科の植物みたいに多肉質。花は白くて蝋細工のような照りがある。小さな花が集まって毬状となり、芳香がある。開花期は5月から9月。

 花1

 花2
 記:島乃ガジ丸 2006.7.3  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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