オオイタビ
 薬草の勉強を始めて1年近くになる。暢気者かつ怠け者の私なので1年近く経ってもまだ薬草研究家としてはひよっこのまま、・・・というのは置いといて。
 これまで多く植物を紹介しているが、それが薬草にもなるということにはほとんど留意せずにいたので、薬草を勉強するようになって「あっ、これも薬になるんだ」という発見がいくつもあった。ごく身近なものでもアメリカフウロ、イヌビワ、イノモトソウ、オオキンケイギクなどその他多数。そして、オオイタビもその1つ。

 オオイタビはよく見る植物で、とても身近。なので、私のブログでも既に2005年5月に紹介済み。薬効があることを追記しようと14年前の記事を確認する。そして、14年前の間違いに気付く。沖縄の植物を紹介しようと思って勉強を始めたのは2004年、1年間程度の勉強では、植物学科生徒としてもひよっこだったようだ。
 間違いとは、その頁で一緒にヒメイタビを紹介しているが、大きいのがオオイタビなら小さいのはヒメイタビであろうと思い込んで、何の疑いも無く掲載しているヒメイタビの写真が間違い。私がヒメイタビと判断したのはオイタビのようである。
 オオイタビが生えている近く(に限らないが)には、オオイタビよりずっと小さい葉のツタをよく見る。その小さい葉のツタをヒメイタビと私は思い込んでしまったのだが、オオイタビは「幼苗の葉も茎もかなり小さいため別の植物に間違えやすい」と『琉球弧野山の花』にある通り、私は別の植物(ヒメイタビ)と間違えてしまったのである。
 ということで、2005年の記事は削除し、オオイタビは内容を変更して新たに書き直し、ヒメイタビについては見つけ次第、写真を撮って紹介することにしたい。

 ・・・したいと思って約1ヶ月、その間、いくつかの公園を歩き回ってヒメイタビかもしれないと思われるものやオオイタビの写真を合わせて40〜50枚撮った。『琉球の樹木』に両者の見極め方が詳しく書かれてある。それを参考に40〜50枚の写真を検証した結果、40〜50枚の全てがオオイタビだった。ヒメイタビが見つからない。  オオイタビ(大崖石榴):壁面
 クワ科の常緑蔓植物 原産分布は関東以南、沖縄、台湾、他 方言名:イシバーキ
 名前の由来は資料が無く不明。近縁種にイタビカズラがあり、広辞苑にイタビを崖石榴との漢字表記があった。本種もイタビカズラもクワ科イチジク属。イチジクは無花果と漢字表記するが、同じ仲間にザクロ(石榴)があり、崖を這うザクロという意で崖石榴ということであろう。本種は大型(特に果実が)なのでオオ(大)が付くのであろう。
 『琉球の樹木』にはイタビカズラの漢字表記が薜茘葛とあり、オオイタビは大薜茘、ヒメイタビは姫薜茘と漢字が充てられている。薜茘、全く知らない単語、辞書やネットのWiki等で調べた結果、ヘイレイと読み、マサキノカズラ(真拆の葛)のことで、マサキノカズラはテイカカズラを指しているのではないか・・・と私の調査結果となった。
 イタビカズラ類はクワ科イチジク属、テイカカズラはキョウチクトウ科テイカカズラ属で遠く違う植物だが、ツル性木本で気根で貼り付くなど形態は似ており、葉の見た目も似ている。ただ、花と実の見た目は大きく異なる。
 などということから、ここでは漢字表記を大崖石榴とした。「果実がザクロ(石榴)に似ていて、崖を這う性質を持つもの。その中でも果実の大きいもの。」という意。
  陽光を好むが、半日陰でも生育する。枝からいくつも気根(同じクワ科フィカス属のガジュマルなども気根を多く出す)を出し、それが壁に吸着し、成長する。
 フィカス属(イチジク属)にはフィカス・ベンジャミナ、フィカス・ハワイなどがあり、他に、ボダイジュやゴムノキなどもフィカス属で、沖縄にこの属の植物は多い。学名では、オオイタビはフィカス・プミラ。ガジュマルはフィカス・ミクロカルパという。
 濃い黒紫色の果実は、同種のイタビカズラやヒメイタビに比べて大きく、観賞価値がある。結実期は5月から9月。イチジクと同じく無花果で、果実の内部に花がある。なお、雌株の果実は甘く生食できるとのこと。雌株の果実は発見したが、まだ食べていない。
 茎葉は薬効があり、乾燥させ煎じて服用する。高血圧や糖尿病に効果があるとのこと。

 雄株の果実

 雌株の果実

 雄株雌株の果実の中

 訂正記:2019.5.6
 記:2005.5.6 島乃ガジ丸  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
 『藤田智の野菜づくり大全』藤田智監修、NHK出版編
 『やんばる樹木観察図鑑』與那原正勝著、ぱる3企画発行
 『熱帯の果実』小島裕著、新星図書出版発行
 『熱帯花木と観葉植物図鑑』(社)日本インドアグリーン協会編、株式会社誠久堂発行
 『ハーブを楽しむ本』川口昌栄編集、株式会社集英社発行
 『琉球薬草誌』下地清吉著、琉球書房発行
 『沖縄やんばるフィールド図鑑』 湊和雄著 実業之日本社発行
 『グリーン・ライブラリー』タイムライフブックス発行
 『ネイチャーガイド 琉球の樹木』大川智史・林将之著、株式会社文一総合出版発行
 『つる植物』沖縄都市環境研究会著 (有)沖縄出版発行
 『熱帯アジアの花』ウィリアム・ウォーレン著、チャールズ・イー・タトル出版発行
 『講談社園芸大百科事典』野間省一編集、講談社発行
 『沖縄の薬草百科』多和田真淳・大田文子著、那覇出版社発行
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