マンデビイラ
 実家のトートーメー(仏壇のこと)のある部屋は、西側の一面がその幅いっぱいの掃出し窓になっていて、窓の外は奥行き120センチほどのベランダとなっている。部屋は畳間で、6畳の広さがあり、祖母が生きている頃、そこは祖母の部屋でもあった。
 東京暮らしから帰って実家に住むようになってから、祖母の部屋の西側の窓がいつも障子で閉じられていることに気付いた。トートーメーがあるということだけでも何か暗い雰囲気があるというのに、外の光も入ってこないのでは年寄り独り、さらに孤独を感じて気分も暗くなるのではないかと思い、私は毎朝その障子を開けてやっていた。
 数日経って、正確には覚えていないが、午後4時頃だったか、たまたま祖母の部屋に行ったら、朝開けたはずの障子が閉じられていた。何故か?はすぐに判った。西日だったのである。祖母も、暑さを我慢するより暗さを我慢する方が楽なのであった。
 私は親孝行息子でも無いが、ジジババ孝行孫でも無い。その時はほんの気まぐれで、「よし、帰郷記念だ。オバーのために明るくて暑くない部屋にしてあげよう」と思い、ベランダの改造に取り組んだ。改造といっても、ベランダにプランターを並べてツル植物を植え、庇の高さまでメッシュを張り付けるだけのこと。夏までにはツルが伸びて、西日を遮ってくれるだろうという計画。作業は1日で終わる。

 私が選んだツル植物は、園芸店で鉢物として売られていたマンデビイラ。その性質を私は理解していたわけではない。花がきれいだったから選んだのだ。失敗だった。
 マンデビイラは夏になっても遮光としての役割を担えるほど成長してはくれなかった。分枝が少なくて、葉の数も少ない。メッシュに絡まってはいるが、スカスカ。花がきれいなことに間違いは無かったが、遮光の役にはほとんど立たなかった。

 マンデビイラ:フェンス・パーゴラ・鉢物
 キョウチクトウ科の常緑蔓性木本 南アメリカ原産 方言名:なし
 マンデビイラは学名の属名。ずいぶん前から園芸店で販売されているのに和名が無い。ラッパ状の鮮やかな桃色の花がきれいで目立つ。○○アサガオとか、○○カズラとか名前がつきそうなもんだが、マンデビイラなんて覚えにくい名前のままとなっている。
 巻きつる型で、他のモノに絡みつきながら伸びて、広がる。枝の先にまとまって花をつける。全体の花の量はそれほど多くは無いが、色が鮮やか。開花期は4月から12月。
 陽光地を好む。成長が遅いので、辺り一面を覆うまでには時間がかかる。葉も照りがあってきれい。園芸点では行灯仕立ての鉢物としてよく見かける。

 追記(2006.3.26)
 『沖縄園芸百科』によると、マンデビイラの和名はマンデカズラとのこと。さらに、元の名をディプラディニア・アモエナと言ったらしい。そういえば、私がオバーのために買った当時は、ディプラディニアという名前であったことを思い出した。
 記:島乃ガジ丸 2005.8.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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