フサナリツルナスビ
 私は、子供には好かれる方である。おそらく見た目が優しそうに見えるのだろう。だけども、実際はそうでもない。私の心は注意報が出るほどに乾燥している。まあ、良く言えば、あっさりしているとかさっぱりしているとかの表現になる。情熱やら執念やら、石に噛り付いてでもとかの文字や言葉、私の辞書ではもう、だいぶ掠れてしまっている。
 アパートから職場へ徒歩で通勤する場合は、小学校を突っ切って行くとだいぶ近道になり、最初の1年ばかりはそうしていた。東門から入り、西門へ抜けるのだが、その西門の前は幼稚園になっている。幼稚園の傍を通ると、場合によっては子供たちが外で遊んでいたりする。すると、中には元気な子もいて、「おじさん」と言いながら寄って来て話し掛ける。元気な子は女の子に多い。2、3人でやって来る。無視するわけにもいかず、かといって、下手に愛想すると、「何してるの?」と訊かれるはめになる。
 「歩いている」
 「何でここを歩いてるの?」
 「近道だから」
 「どこへ行くの?」
 「仕事」
 「何の仕事?」
などなどと、次から次へと質問が来る。私も次から次へと答えるが、通勤の途中なので、そうは時間も無い。「急いでいるから、じゃあね」と言って切り上げる。そういった会話を私は楽しんでいない。子供たちと話すのは面倒なことだと思っている。2、3度そういう経験があって以来、近道通勤は止めてしまった。

 平日は子供たちがいるのでその近道を使うことは無いが、子供たちのいない土日には、たまにだが通ることがある。2、3ヶ月前のある休日に、久しぶりにその近道を通った。幼稚園が右前方に見えた辺りで、ひょいと右横を見ると見慣れない花があった。モモイロノウゼンの枝に絡みつくようにした枝の先から青紫色の花を房状にして垂らしている。
 モモイロノウゼンは隣地との境界にあるフェンスの傍に立っている。その枝に絡まっている蔓植物はフェンスの向こう、隣の民家の庭から伸びてきていた。藤のように鈴なりに房が垂れているというわけでは無いが、一房の花はきれい。デジカメを持っていたので写真を撮る。そのまま散歩を続け、買物を終え、家に帰ってから、調べる。

 フサナリツルナスビ(房成蔓茄子):法面・壁面
 ナス科の常緑蔓植物 原産分布はブラジル 方言名:無し
 伸びた蔓の先に青紫色の花が房状にかたまってつく。開花期はほぼ周年。花が終わった後の紅赤色の丸い実もきれいであり、観賞価値がある。繁殖力は旺盛で、実生で簡単に増やすことができる。種が発芽しやすいということで、野生化した株も多いらしい。
 別名をルリイロツルナスという。
 記:島乃ガジ丸 2005.4.23  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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