ホウライカガミ
 昨年上映された映画「風音」の中でも印象的に描かれていたが、オオゴマダラというチョウはそれよりもだいぶ前からブームと言える状況にあった。オオゴマダラの幼虫が本土の熱帯植物園などに高値で売れるという話は5、6年前に聞いていたし、同じ頃、宮古島かどこかにチョウ園があり、そこのオオゴマダラが人気だということも聞いていた。
 その1、2年後だったか、優秀な人材ではあったが、社長とウマが合わずリストラされて、今はいない同僚のTが、インゲンのような莢状のものを見せて、
 「これ、何か判る?」と訊いた。
 「なに?食えるの?美味しいの?」と応じる私に、彼は笑いながら、
 「食いモンじゃないよ。ホウライカガミの種だよ。」と答えた。
 「何だ、ホウライカガミって、きれいな花でも咲くの?」
 「オオゴマダラの食草だよ。オオゴマダラの幼虫はこれしか食わないんだ。」
 「オオゴマダラって、あの最近有名なチョウの?」と言いながら私は思い出した。
 「そういえば、この莢、最近見たな。そうだ、近くの小学校にあったわ。」と言うと、
 「成虫は日本一大きなチョウだし、蛹は金色できれいだし、最近流行っているから、あちこちの小学校や幼稚園で植えられているみたいだよ。」とTは答えてくれた。

 近くの小学校のホウライカガミにオオゴマダラが近寄っているのを見たことは無い。幼虫の存在も未だ確認していない。が、Tが植えた職場のホウライカガミにはオオゴマダラが寄ってくるのを何度も目撃しており、今たくさんの幼虫が付いている。植物に詳しいTは、チョウの生態にも詳しかったようで、きっと植え場所が好適だったのであろう。

 ホウライカガミ(蓬莱鏡):フェンス・養蝶草)
 キョウチクトウ科の多年生蔓植物 沖縄、台湾、他に分布 方言名:ビンカジラー
 大型のツル植物で、茎の長さは3〜5メートルに達する。花は小さく、緑白色であまりきれいとは言えない。葉柄の脇や茎の先から花茎を出し、その先にたくさんの小さな花がかたまって(集散花序というらしい)つく。インゲンマメのような莢状の実をつける。
 日本最大のチョウ、オオゴマダラの幼虫の食草として有名。もともと海岸近くに多く見られる野草の一つでしかなかったが、オオゴマダラのおかげで、今では小学校や幼稚園の庭の一角でも見かけることができる。蝶を呼ぶ草として植栽されているようだ。開花期は周年。莢状の実も年中あり、種から簡単に増やすことができる。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2005.7.18  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
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