ハブカズラ
 今年(2011年)9月、与那国八重山の旅に出かけた。大学時代の友人Rが同行していたが、二日目の昼間は単独行動となる。Rは竹富島へ、私は石垣島。
 何年か前に八重山を旅した時、沖縄県の最高峰(といっても標高500m程)である於茂登岳登頂を途中断念したので、その再チャレンジを初め考えていたが、今回は観光案内地図で発見した石垣島の大きな公園、バンナ公園を散策することにした。
 地図で見た大きな公園は実際にも広大であった。バンナ公園の広さは約290ヘクタール、沖縄のあの海洋博公園で約72ヘクタール、ディズニーランドとディズニーシーを合わせた広さが約100ヘクタールらしいので、その広大さが判ると思う。

 バンナ公園の話はいずれ『与那国八重山オヤジ二人旅』なんて題で旅日記を書く予定なので、それに譲るとして、ここでは植物の話。バンナの森林内で見つけたハブカズラ。あの噛まれたら死ぬかも知れない恐ろしい蛇と同じ名前のカズラ。
 公園内の鬱蒼とした一画にモンステラを小型にしたようなツルが、ジャングルのように蔓延っていた。そこにハブカズラと書かれた名札があった。そこには他にもツル植物があったが、どのツルがハブカズラの名に値するかはすぐに見当が付いた。

 ハブカズラ(波布蔓):鉢物
 サトイモ科の多年草 原産は南太平洋諸島、南西諸島、他 方言名:ナーミヌカジャ
 「はぶ」を広辞苑で引くと、ひらがなの「はぶ」で「青色を帯びた黒い雲母」、英語のhubで「中心。中枢」などの意、漢字の波布・飯匙倩で「クサリヘビ科の毒ヘビ」とある。この中で名前の由来になりそうなものは「クサリヘビ科の毒ヘビ」しかない。よって、漢字を波布とした。「クサリヘビ科の毒ヘビ」はもちろん、あの毒蛇ハブのこと。
 方言名のナーミヌカジャも気になったが、これも資料が無く、正確なところは不明。ナーミは「波」または「並」の意、カジャは「ねばり強いもの」または「下等なもの」の意で、どう組み合わせてもしっくりこない。カジャは蔓の沖縄発音カンダがなまったものと想定して、「葉が波打っている蔓」ということではないかと推理する。
 着生型の蔓植物で、茎から吸着根を出し、他のものに着生しながら伸びる。耐陰性があるので、鉢物として室内装飾に使える。葉に深い切れ込みがあり、観葉植物として人気の高いモンステラ(ホウライショウ)に良く似ている。学術的にはモンステラよりも同じく観葉植物として有名なポトス(オウゴンカズラ)に近い。ちなみに学名、
 ハブカズラEpipremnum pinnatum
 ポトスEpipremnum aureum
 モンステラMonstera deliciosa Monstera
 記:島乃ガジ丸 2011.11.7  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
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