ベンガルヤハズカズラ
 母校の首里高校の校歌は、「仰げば高し弁ヶ岳 千歳の緑 濃きところ」と始まる。冒頭に出てくる弁ヶ岳は学校から見ると概ね首里城の方向、首里城を超えた向こうにある。歩いて行くと、だいたい20分ほどの距離。「仰げば高し」とあるが、学校から見ても、近くに行って麓から見ても、仰ぐほどの高さでは全然無い。そう広くも無いので、小高い丘のいくらか木立の茂った、ちょっとした空間といったところ。
 先々週の日曜日は弁ヶ岳周辺を散歩した。数年ぶりのことになる。高校生の頃、近くに住んでいたが、それでもここに訪れたのは数回あるかないか。特に見るべきものは無いので、しかも、ちょっと不気味(先の大戦で激戦地だった。霊がウヨウヨしている雰囲気がある)なので、若者はあまり来ない。観光客もめったに来ないであろう。その日、その林の中で私が見かけたのは二人、中年の夫婦だけ。近所の人たちもやってこない。子供たちも遊びに来ない。きっと不気味さが伝わっているのかもしれない。
 弁ヶ岳は一応公園ということになっているのか、役所が管理しているようである。落ち葉や枯れ枝、朽木などがあちこちに多く見かけられたが、弁当箱やら空き缶やらのゴミは少なかった。そんな、私にとってはしっとりとした静けさの中、木々の吐く空気を吸いながら気持ちよく散歩する。大きな木の上からズアカアオバトの鳴き声が聞えた。

 散歩は、樹木の写真、特にこの時期開花を見る植物の写真を撮ることが大きな目的であったが、写真は、弁ヶ岳ではほとんど撮れなかった。一応は聖地とされているので、華やかな花木で飾るということを良しとしないのであろう。しかし、弁ヶ岳を出てすぐの道路沿いに、今が盛りと花を咲かせている蔓性の植物があった。これが本日の大きな収穫。写真を撮る。帰って調べるまでも無く、私も良く見知っている花。見知ってはいるがいつ頃咲く花なのかまでの知識は無かった。花は、ベンガルヤハズカズラであった。
 ガジ丸の記事を書いているお陰で、私もそのうち、季節を知るオジサン、もっと年月が経てば、季節を知るタンメー(爺さん)になれるであろう、と嬉しく思いつつ文献を調べる。ベンガルヤハズカズラの開花期は周年とあった。いつの時期でも花が見られるのだ。花の存在に私が気付かなかっただけなのだ。物知り爺さんへの道は遠いようである。

 ベンガルヤハズカズラ(べんがる矢筈蔓):壁面・パーゴラ
 キツネノマゴ科の常緑蔓植物 原産分布はインド 方言名:無し。
 日光の良く当たるところで生育が良い。そういった環境の良い場所では成長が旺盛で、ツルを多く出し、他のものに巻きつきながら長く伸びる。
 青紫の花が房状につき、直径8cmほどの大きさ。群がって下垂して咲く。花の根元の部分は釣鐘状で、その先の花びらは5弁に分かれ、横に水平に開く。開花期は周年とあるが、この時期は開花数が多く、全体の景色が華やかに見える。

 花
 記:島乃ガジ丸 2005.4.23  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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