ウロコマリ
 首里にある末吉公園を時々(年に数回程度)散歩している。そこは、沖縄島南部の原生林が残っていて、自然観察にはもってこいの公園。散歩しながら、いろいろな植物、あるいは、そこを住処とする動物の写真を撮らせてもらっている。
 散歩の際、私は概ねキョロキョロしている。俯いて足元の草を見、顔を上げて木々の枝葉を見る。右を見、左を見、時々振り向いたり、民家の庭を覗いたりもする。まるで、挙動不審者である。私の散歩した辺りで何か事件が起きたら、疑われるに違いない。
 「確か、この男です。」
 「間違いないですか?絶対ですか?」
 「絶対かと言われるとちょっと、確信は・・・。」
 うろ覚えの証言で重要参考人となった私は、警察の取調室で、刑事に尋問されるが、身に覚えの無いことなので、わけが判らず、うろ困りするに違いない。

 ちなみに、「うろ困り」などという言葉は無い。「困る原因が何なのか不明なのに困っている状態」を表現してみた。ウロコマリという植物はある。末吉公園の原生林の立ち並ぶ足元を見ながら歩いていると、独特な形の穂と小さな白い花に気付く。

 ウロコマリ(うろこまり):下草
 キツネノマゴ科の多年草 沖縄に分布 方言名:なし
 名前の由来については文献に無く、不明。しかし、ウロコは、花穂が鱗をまとっているように見えるので、鱗だと思われる。ウロコという日本語は鱗以外に無いし。マリは毬とか鞠とかになる。ただ、花穂も花も葉も毬のようでは無い。
 もしかしたら、ウロとコマリに分かれるかもしれない。ウロは虚、どこか虚ろな花、コマリは小毬、ただ、花が虚ろには見えないし、花穂も花も葉も小毬のようでは無い。
 原産分布についても文献に記載が無く、詳しくは不明。ただし、『沖縄植物野外活用図鑑』の『山地の植物』にあったので、沖縄には産するようだ。
 高さは40センチ内外で、茎が硬く、直立する。石灰岩地域(沖縄島南部など)の森林の中、足元に多く見られる。
 枝先または葉腋から短い花柄を出し、その先に5センチ内外の穂状花序をつけ、花序から白色の小さな花が数個ずつ顔を出す。開花期についても資料が無いが、文献の写真は2月。私の経験では、末吉公園のものは晩秋から春先まで咲いている。

 花
 記:島乃ガジ丸 2009.2.18  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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