ウキクサ
 HPで植物を紹介するようになって3年が過ぎたが、「私は植物の専門家です」と名乗るにはまだ、はるかに遠いと自己認識している。元より、あまり真面目でない私は、3年経ってもまだ「ある程度はテキトーでいいや」という気分を持ったままでいる。
 というわけで、「植物大好き、植物のことなら何でも知りたい」などという風には、私の精神構造はできていない。その証拠に、今回ウキクサを紹介するが、ウキクサと聞いて私が先ず思い浮かぶのは、植物のウキクサじゃ無いのである。
 ウキクサと聞いて真っ先に思い浮かぶのは浮草稼業という言葉、「浮草のように転々として、一つの場所に落ちつかない職業」(広辞苑)のこと。そして、そのような職業を持つ人物として車寅次郎、フーテンの寅さんを思い出す。ちなみに、フーテンとは瘋癲と書き、「定まった仕事も持たず、ぶらぶらしている人」(同)のこと。
 浮草稼業とフーテンは上記の通り、多少意味が違う。寅さんは香具師(やし)という職業を持っているので、正確にはフーテンでは無く、浮草稼業ということになる。

 大学を卒業して数年間、私はフリーターであった。時々アルバイトをして、時々ブラブラしていた。つまり、「定まった仕事も持たず、ぶらぶらしている人」だったので、私こそがフーテンだったのである。その後、2年ほどは定職についたが、それからまた数年間はフーテン暮らしであった。今の言葉で言えば、ニートということになるだろうか。
 「自分の天職とは何であろう、自分は何をして生きていけばいいのだろう。」その答えが見つからないまま日々を漫然と暮らす。稼業を人生に置き換えれば、その頃の私は「浮草のように転々として、一つの場所に落ちつかない人生」であった。
 「何をして生きていけばいいか」については、今も私は答えを見つけていない。まだフラフラしているのだ。どこへ流れていくのやら我が人生、なのである。

 ウキクサ(浮草):水面
 ウキクサ科の多年草 方言名:ウチグサ
 池や沼の水面に生息するのでウキクサ(浮草)、という分りやすい名前。方言名のウチグサはウキクサの沖縄読みで、同じ意味。ウキクサは倭国でも沖縄でも浮いている。
 広辞苑に「3個の葉状体から成り」とある。つまり、三つ葉ということだが、私が見たものには四つ葉も多くあった。四つ葉のウキクサ、幸運だろうか?
 ごく小さい、小さいことが特徴になっていて、『沖縄教材植物図鑑』に「葉の長さ4〜7ミリ」とわざわざ記載がある。水面下に鬚根を出している。
 個体の一つ一つは小さいが、群生して大きく広がる。夏場には池の一面を覆うこともある。冬には枯れて消えるが、水底に冬芽が残り、越冬し、翌年、水面に出る。
 広辞苑にはまた、「稀に裏面に白色の微小花をつける」とあったが、「稀に」は本当に稀のようで、私はその花を見たことが無い。
 記:島乃ガジ丸 2007.10.26  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
inserted by FC2 system