トウワタ
 舶来品という言葉を最近ほとんど聞かないが、若い人ではこの言葉を知らない人もいるのであろうか。舶は船舶(大型の、貿易に使われるような船のこと)のこと。舶来品とは船によって運ばれてきた品、いわゆる輸入品のこと。
 私が子供の頃は、沖縄はまだ日本への復帰前で、アメリカの占領地であった。沖縄のあちこちにアメリカ人がいっぱいいて、アメリカの品々もたくさん入ってきた。ハンバーガー、ホットドッグ、ピザ、タコス、フライドポテト、フライドチキン、コーラ、ルートビア、ポップコーンなどが舶来品として、ドドーっとやってきた。
 舶来品は食品だけでなく、衣料品や電化製品、車など生活に関わるもの全般に渡って沖縄の暮らしに入ってきた。だからその頃、舶来品といえばアメリカームン(アメリカ物)となっていた。アメリカームンは日本物より上等で、当然、沖縄物よりははるかに上等なものだと評価されており、ウチナーンチュはアメリカームンをありがたがった。
 もっと、ずっと昔、琉球王朝の時代はしかし、ウチナーンチュがありがたがったのはアメリカームンでは無く、カラムン(唐物)であったようだ。カラムンはシマー(島の物)より上等な物とされていた。当時はまた、外国といえば中国であったので、唐物という言葉は中国からの輸入品だけでなく、外国からの輸入品全般を指していたようである。舶来とか洋物とかいう言葉は無く、外国からきた物の多くは、唐と名がついた。

 トウワタという植物は南アメリカの原産ではあるが、唐の綿という名になっている。この唐は、上に説明した通りのことで、外国という意味で使われている。琉球において昔、中国が外国の全てを表現していたように、倭国においても同じく、中国は外国の代表であったのである。そんな中国とは、できるだけ仲良くして欲しいと、私は願う。

 トウワタ(唐綿):花壇
 ガガイモ科の多年草 南アメリカ原産 方言名:セーヤン
 熟した種子には白い綿毛がつく。そこから綿という名。唐は「外来の」ということ。茎を切ると白乳液を出すが、毒性があり、葉にも毒がある。その葉を食草とするカバマダラの幼虫にも毒が移り、蝶になっても毒が残る。ために、鳥に食べられないとのこと。
 茎は高さ1メートルほどにまで伸び、5月頃から秋にかけて、茎の先に橙色の小さな花を集めて傘状に咲かす。種が飛んだのか、道端に咲いているのもたまに見かける。

 花

 綿

 キバナトウワタ
 記:島乃ガジ丸 2005.7.29  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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