テッポウユリ
 私は5、6年前までテニスをやっていた。始めた頃は同級生が中心で、オジサン、オバサン同士でチンタラやっていたが、若い人たちが仲間に加わるようになり、しだいにチンタラはできないようになってしまった。「勝たなければ意味が無い」みたいな体育会系の雰囲気を持つようになって、楽しければいいじゃないかという気分のオジサンはついていけなくなった。体は疲れるし、楽しくないし、で、辞めてしまった。
 その時のテニスサークルは今でも健在だが、始めた頃のメンバーはもう二人しか残っていない。ただ、私が辞めた頃のメンバーがその二人を加えて8人ほどはいる。私の知らない人も8人ほどいる。知っている人も知らない人も混ぜて、年に1回か、あるいは2年に1回ほど、私は彼らと会っている。テニスでは無く、キャンプで。
 ベテランのダイバーであり、釣師でもあるMさん(彼も元テニス仲間で、私が辞めた後しばらくして彼も辞めた)は、キャンプにおける我らがリーダー。彼の号令でキャンプの有無が決り、場所もたいてい決り、そして、日時が決る。以前は夏も秋も冬もやっていたキャンプだが、この5、6年はゴールデンウイーク期間中となっている。
 場所は決って本島北部、ヤンバルと呼ばれている辺り。恩納村や本部町、今帰仁村などのキャンプ場、もしくはバンガロー、あるいはペンションなどとなっている。

 5月の始め頃のヤンバルには、山野に自生している白い花がその見頃を迎え、車の中からでも見事な景色を見ることができる。イジュの花も琉歌に詠われるほど美しい花だが、イジュはまだ咲き始めの頃で、一面を覆うほどには咲いていない。この時期、今が盛りと咲き乱れているのは、美人の歩く姿と喩えられている百合の花。沖縄産テッポウユリ。
 リュウキュウユリと別称がある通り、テッポウユリの原産地は琉球列島。これを基本種として日本やアメリカでいろいろな園芸品種が生まれた。アメリカではEaster lily(イースターリリー)と呼び、復活祭(イースター)に無くてはならない花となっている。復活祭は春分後の満月直後の日曜日に行われる祭事なので、3月の下旬。ちなみに(キリスト教徒ではないので関係無いが)、今年2005年の復活祭は3月27日にあたる。
 今日栽培されている園芸品種の多くは、イースターリリーもそうだが、自然栽培での開花は4月から6月となっている。自生のテッポウユリはそれらの園芸品種より少し早めの3月から咲き始める。が、栽培技術により開花を早くしたり、遅くしたりできる。イースターリリーは復活祭に合わせ、テッポウユリは正月に合わせたりする。だが、旬の食い物は旬に食うと美味い、のと同じように旬の花は旬に観るとより美しい。4月から6月のヤンバル路へ出掛ける機会があれば、ぜひ旬の花を楽しんでいただきたい。

 余談。恋も、旬の若い時の方が良い。冒険、有頂天、絶頂、ぬか喜び、挫折、奈落などなど、明日の向こうに何があるか分からないモノは食べ応えがある。それに対し、オジサンの恋は冷めた御飯みたいで、食べる前から後味まで予想がつく。それでも、無いよりははるかに増しというもの。美味しいものだと思い込んで口に入れたりするのである。

 テッポウユリ(鉄砲百合):花壇・切花
 ユリ科の多年草 原産分布は屋久島から琉球列島 方言名:ユイ、ユーガバナ
 別名リュウキュウユリ、サガリユリ、ツツナガユリとも言う。茎の先端につく白色の花が群がって咲く。花には芳香がある。球根や切花としても人気があり、販売されている。
 日当たりの良い、排水良好な場所でよく生育し、1本の茎からいくつもの花を咲かせてくれる。開花期は3月から6月となっているが、上述の通り、開花期は調節することができる。調節は球根の冷蔵処理による。宮古諸島で栽培が盛ん。
 本島北部の伊江島では毎年GWの頃、ゆり祭りが開かれる。島にリリーフィールドという名の公園があり、その名の通り、一面テッポウユリの花が咲き誇る。

 花
 記:島乃ガジ丸 2005.2.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
inserted by FC2 system