テンニンギク
 死後の世界に天国とか地獄とかがあるとは、私は思っていない。死んだら、死んだ者の数だけ無数の世界があると思っている。天国地獄の概念は、「この世では正しく生きた方がいいよ」ってことを教えるために作られたものであろう。確かに、皆が清く正しく生きている世界ならば、お互い住みやすいはず。命を奪われる心配は無く、財産を奪われる恐れも無い。枕を高くして寝られるわけだ。安心安全安眠が幸福の第一。
 テンニンギクという名の由来を調べたら、「天人」は「天界に住む神々」とあった。ここからちょっと話が逸れる。じゃあ「天界」とは何ぞやとなり、調べる。「天上の世界」とある。「天」は「神々の住む領域」で、「人間世界(人道)よりはすぐれているが、六道の一で、なお輪廻を免れない領域とされる。欲界の六天、色界の十八天、無色界の四天と階層的に構成される。」とある。ほほう、仏教では天にもいくつかあるようだ。
 いくつかある「天」はまた、ひっくるめて一つの世界となっており、「十界」の中の一つとなっている。「十界」とは「迷いと悟りの全世界を10種に分けたもの」で、「地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人間界・天上界(以上迷界)と声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界(以上悟界)。」とに分けられている。「教え」のためにいろいろ考えたようだ。天国と地獄しかない「教え」よりも出世ゲームみたいでなかなか面白い。
 テンニンギクの名前の由来は不明だったが、人間界よりランクが一つ上の名前がついているということは、普通よりは上と言っているのであろう。
 ※以上、引用はいずれも広辞苑

 テンニンギク(天人菊):花壇
 キク科の一年草 北アメリカ原産 方言名:なし
 「天人」を広辞苑で見ると、「天界に住む神々。人間より優っているが、なお輪廻の迷いの状態にある。」とあった。ということはこのテンニンギク、「最上では無いが、まあまあきれいなキク」ということになるのか。正確なところは不明。
 高さは40センチほどになる。花の直径は5センチ内外。縁は黄褐色または黄赤色で、基部は紫色。開花期は5〜10月と書いたが、私が見たのは11月。栽培されたものが流出して野生化したものもあるらしい。私が見たのは街路の植栽桝。
 「天人」と名のつくものは他にテンニンソウ(天人草)があり、シソ科の多年草で、日本各地の山林中に見られるとのこと。ただ、私が参考にしているどの文献にも記載が無いので、沖縄には自生していないのかもしれない。もう一つ、テンニンカ(天人花)というフトモモ科の常緑低木がある。これはまた、日本では沖縄にのみ自生する。テンニンカは花がきれいで、果実も食べられる。写真が撮れたら紹介したいと思う。

 花
 記:島乃ガジ丸 2006.11.5  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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