タチバナゲットウ
 映画を観に桜坂劇場へ行くときは、たいていバスで行く。石嶺バス停か乗り、牧志バス停で降りる。映画を観終わると、久茂地のパレット久茂地に寄ることがたびたびある。ということで私は、那覇のメインストリートである国際通りを、北端の安里から南端の久茂地まで、少なくとも年に1、2回はバスの中から、あるいは歩きながら見ている。
 国際通りは、安里付近はまだ工事中だが、ここ数年で随分と変わった。通りに並ぶ建物はいくつか変わっただけだが、歩道が大きく変わって、街路樹も変わった。スッキリとシンプルになり、歩きやすくなった。木陰が少なくなったのがマイナス点。

 今年5月のある日、牧志から久茂地に向かって歩いていると、松尾近辺で知らない道ができていることに気付いた。「知らない道を歩いてみたい」というのは散歩を趣味とする私の癖。目的地は直進だが、知らない道のある方向へ左折する。
 その道はすぐに消防署通りと呼ばれる道と合流した。で、地理関係が分った。ずっとまっすぐ行けば那覇高校の交差点へ出る。と解ったところで戻ろうと決める。その時、前方数m先のマンションの門前に、実物は見たこと無いが、図鑑では見ていてその姿を記憶している植物があることに気付いた。タチバナゲットウ、写真を撮る。

 タチバナゲットウ(立花月桃):添景・鉢物
 ショウガ科の多年草 マラッカ原産 方言名:なし
 ゲットウの名前の由来は参考文献になく、不明。私の想像では「花の蕾が三日月のような形をしていて、桃のような甘い匂いがするから。」となるが、もちろん適当。タチバナははっきりしている。ゲットウの花が下垂するのに対し、本種は直立するから。
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』に「ゲットウに比べて草丈が大きく、根元から分枝する数も多い。」と、ゲットウとの違いを書いてあるが、同書にはまた、「全体の草姿は区別するのが難しい」ともあり、その通り、花穂が出ていない状態で全体の姿を見ると、ゲットウそっくりである。その状態では、私には両者の判別は無理。ちなみに、学名、
 タチバナゲットウ Alpinia latilabris Ridley
 ゲットウ Alpinia zerumbet Burtt & Smith
 ゲットウからは繊維が採れ、月桃紙が有名であるが、本種からも葉梢部から繊維が採れるとのこと。ゲットウはまた、香料も採れるが、本種からも採れるかどうかは不明。私が見たものは花も葉も、特にゲットウのような匂いはしなかった。
 高さは1〜3m、多くの茎が出て株立ちとなる。陽の当たる、やや湿潤地を好むが、半日蔭でも、乾燥地でも育つ。花色は白、開花期5月から6月。

 花
 記:島乃ガジ丸 2008.8.13  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
inserted by FC2 system