タチアオイ
 小学校の思い出というと、歩いて20分以上もかかる若狭海岸へ行って、泳いだり魚釣りをしたこと、筏を作って乗ったこと、小金森で蝉捕りをしたこと、漫画を読んだこと、漫画を描いたこと、教室の裏手にある排水溝の匂いがドブ臭くて嫌だったこと、コールタールの敷かれた道で転んで、全身真っ黒になったこと、交通事故に会って腕の骨を折り、三ヶ月間入院したこと、好きな女の子が二人いたこと、などいろいろあるが、植物に関する思い出は、このHPの名前にもなっているガジュマル以外には何も無い。
 ガジュマル以外にも名前の知っている植物はその頃でもいくつかあったが、ガジュマルは特別に意識に残っている。キジムナーの棲家だと言われていたからである。
 ガジュマルの大木の根元に砂で階段(3段ほど)を作って、線香をあげるとキジムナーがやってくるという噂があった。もちろん、それを試すなんて恐ろしいことを、私と私の仲間がやるはずは無かった。キジムナーは子供のように小さいということは知っていた。それでも、恐ろしい化け物であるという印象を我々は持っていた。

 小学校での草木の思い出はガジュマル以外に思い出せなかったのだが、先日、友人のE子が「タチアオイは小学校の頃花壇にあって、すごくよく覚えている」というのを聞いて私も思い出した。教室の前にある花壇に、そういえばこんな花が確かにあった。そしてまた、そのついでに好きな女の子の名前を一人思い出した。NYさん、元気かなあ。

 タチアオイ(立葵):花壇
 アオイ科の多年草 中国原産 方言名:不詳
 アオイの由来が文献に無く、不明。中国からやってきた原種の花色が青かったから、というわけではなかろう。青い花は在来の植物にいくらもあったはず。”青い”なんて分かりやすい名前をわざわざ外来種につけることは無かろうと考える。
 漢字の葵には「四方にひらく」という意味がある。単にアオイというとタチアオイのことを指すらしい。タチアオイの花は確かに「四方にひら」いている。
 高さは2mほど。葉面に皺があるのが特徴。園芸品種が多く、花色には桃色、紅色、白色、紫色などさまざまあり、また、それぞれに一重、二重、八重咲きがある。
 『沖縄植物野外活用図鑑』には二年生草本とあった。開花期も夏とあったが、友人の家のものも、近所の家のものも梅雨の頃までで、今(7月)は咲いていない。

 花
 記:島乃ガジ丸 2006.8.21  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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