タマシダ
 道端や野原に生えている植物が雑草なのか観賞用なのか、判断に苦しむことも多い。今回別項で紹介しているリュウキュウイノモトソウもそうである。職場の庭に勝手に生えていて、刈ってもまたすぐに生えてくる。リュウキュウイノモトソウをわざわざ植えて、庭の景色にしているところも私は見たことが無い。よって、リュウキュウイノモトソウは、私の感覚では雑草ということになる。ところが、去年の四国の旅で、宇和島の公園を訪れた際、そこにイノモトソウがあり、それには名札もあった。わざわざ植えて、名札を付けているのだ。これは雑草とするわけにはいかない。イノモトソウが雑草では無いので、その兄弟であるリュウキュウイノモトソウも雑草にしなかったというわけである。

 タマシダもリュウキュウイノモトソウと同じく、野原に自生しているのを見る。リュウキュウイノモトソウは「雑草にしようか」と悩んだが、タマシダはちっとも悩むことは無かった。なぜなら、タマシダは観葉植物の鉢物として、園芸店で見かけたことがあるし、また、庭の景色として植えられているのも見ているからである。
 先週紹介したホシダは雑草としている。同じシダ植物なのに可哀想な感じもするが、ホシダは、私の感覚では間違いなく雑草となる。勝手に生えて、勝手に広がるという点では同じだが、ホシダは煩くて、タマシダは控えめだからだ。でしゃばるかでしゃばらないかで雑草かそうでないかの区分となる。学術的にそうなのでは無く、私の気分である。

 タマシダ(玉羊歯):地被・鉢物
 シノブ科の多年生シダ植物 伊豆半島以南、琉球列島、他に分布 方言名:ムカヂグサ
 今回から参考文献に加えさせてもらった『沖縄の野山を楽しむ植物の本』に名前の由来があった。「根に直径1〜2センチほどの玉のような塊茎という芋をつける・・・そこからタマシダという和名がついて」いるとのこと。私はまだその玉を確認していない。近所の民家の庭にタマシダはあるが、それを引き抜くわけにもいかない。
 方言名のムカヂグサは、正確にはンカヂグサと表記するものと思われる。ンカヂはムカデのこと。タマシダの葉がムカデに見えるということなのであろう。方言名は他に、マヤークーガがあるが、これはマヤー(猫)のクーガ(睾丸)という意味。玉のような塊茎を猫の金玉に見立てたもの。猫の金玉が直径1〜2センチほどかどうかは不明。
 葉の長さは30センチ内外で、高さ50センチほどになる。半日陰で湿地を好むが、乾燥にも強く丈夫な植物。繁殖力が旺盛で成長も速い。胞子嚢は羽片裏の縁につく。
 野山に自生するありふれたシダ植物であるが、観葉植物として人気があり、葉は生花にも利用される。庭の石組みの根締めとして使われているのもよく見る。
 記:島乃ガジ丸 2007.6.24  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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