セイヨウフウチョウソウ
 去年の春、王ジャパンが世界大会で優勝した影響なのか、近所の中学生たちがアパートの前の道でキャッチボールをやるようになった。この道は袋小路になっていて、車の通行は少ない。少年たちがキャッチボールをやるのに都合が良い。
 少年たちがキャッチボールをやっている付近の人たちが車を出し入れする際、少年たちはその手を休める。迷惑になってはいけないと思っているのだろう。反抗期真っ只中の中学生にしてはおりこうさんなのである。オジサンも温かい目となってしまう。
 週末散歩のある日、近くの小学校の中を通った。小学校の週末はたいていグランドでサッカーか野球をやっている。その日は野球であった。試合をやっているようで、野球少年たちとそれを応援するそれぞれの家族がたくさん来ていた。
 小学校の裏門から正門へ抜けようと私は歩いていた。裏門から入ってすぐ、鳥小屋のあるあたりで、少年とその父親らしき男がキャッチボールをやっているのが見えた。少年がこちら側、男は向こう側、男から私は見えている。当然、私が通り過ぎるのを待つであろうと思い、私はボールに注意を向けないまま歩き続けた。少年の後ろへ私がさしかかった時に、「あっ!」という少年の声が聞こえた。私が顔を上げると、目の前にボールが飛んできて、私に当たった。バカ親は、人が通るのを知っていてボールを投げやがったのだ。中学生でも他人に気を使うのに、このバカ大人め!と私はムカッとくる。
 バカ大人は私に向かって手を挙げただけであった。その代わり、小学校3年生くらいの子供が「すみません」と声を出してくれた。投げたほうが悪いのでは無く、ボールを取り損ねた子供の方が悪いということであろうか。まったく、大人の背中が歪んでいる。

 この小学校の花壇には、毎年秋ごろになると咲いて、人の目を楽しませてくれる草花がある。セイヨウフウチョウソウというのだが、その日もその花は咲いていた。他人の迷惑も顧みず、自分のやりたいことをやるという風潮は、自由競争で、とにかく勝ちゃあいいんだというアメリカの影響があるのでは無いか。アメリカ風潮である。
 セイヨウフウチョウソウの花を見ながらそんなことを連想した私であったが、セイヨウフウチョウソウのフウチョウは風潮では無く、風蝶という粋な名前。

 セイヨウフウチョウソウ(西洋風蝶草):花壇
 フウチョウソウ科の一年草 原産はカリブ地方 方言名:なし
 フウチョウソウが広辞苑にあった。漢字は風蝶草。蝶々が風に舞う様が想像される。そういわれれば、そう見えないことも無い。基本種がフウチョウソウで、本種はその園芸品種なのかと思ったら、フウチョウソウの別名にセイヨウフウチョウソウとある。熱帯アメリカ原産のものに西洋とつけるかつけないか、なんて迷ったのだろうか。と思いつつ調べてみたら、フウチョウソウとセイヨウフウチョウソウは属の異なる別種。フウチョウソウの学名はGynandropsis gynandraで、セイヨウフウチョウソウはCleome spinosa。セイヨウフウチョウソウはクレオメとも呼ばれる。それはこの学名から。
 高さは1mほどにまでなる。草花としては背が高い。低い花壇の植栽に向く。花は茎先にかたまって、アジサイのように散開して咲く。蝶々が風に舞う様も良いが、長い雄しべも可愛らしい。色は白、紅、紫色など。開花期は夏から秋。
 明治初期に渡来したとのことだが、私はまったくその存在を知らなかった。数年前から近所の小学校で見るようになって、毎年時期になると、花壇を賑わせている。
 記:島乃ガジ丸 2007.1.3  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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