ササガニユリ
 細蟹姫(ささがにひめ)という姫様をご存知だろうか。竜宮に住む乙姫の縁戚にあたるが、人間型である乙姫とは見た目まるっきり違う。細蟹姫は蟹王の娘である。親に似ずスリムな体つきをしているので、細蟹姫という名。・・・なんてことは無い。
 細蟹姫は織女星、つまり、彦星の恋人である織姫の別称。彦星と織姫、まだ恋人同士であるのなら、年に1回しか会えないなんて可哀想、と思うだろうが、結婚していれば、年に1回会えば済む夫婦となる。何て羨ましい結婚生活!と思う世の女房殿、あるいは亭主殿もいらっしゃるであろう。「亭主元気で留守がいい」のだ。・・・話が逸れた。
 さて、何故、織姫が細蟹姫とも呼ばれるかというと、細蟹が蜘蛛の異称であり、蜘蛛は糸を操る名人であることから、同じく糸を操る織姫の別称となっている。
 ササガニユリは大きな白い花、良い香りもする。白無垢の花嫁さんを連想する。白無垢の花嫁さんから結婚間近の織姫を思い浮かべることもできる。ササガニなどと無骨な蟹を連想させる名よりも、オリヒメユリというかわいらしい名の方が良いのではないかと思うのである。しかし、結婚後何年か経つと、白無垢の花嫁さんも、「このボンクラ亭主!」などと怒鳴ったりして、蟹のような顔になるであろうか。ならば、ササガニで良し。

 ササガニユリ(細蟹百合):花壇・鉢物
 ヒガンバナ科の多年草 原産分布は西インド諸島 方言名:無し
 漢字の細蟹は、文献に漢字の表記が無かったので、私の想像による。文献には「カニの足のように長く伸びた花冠」とあり、なるほど、花の形はそうである。で、おそらく漢字で表記すると細蟹であろうと思ったわけだ。あるいはひょっとして、葉が笹に似ていて、花が蟹に似ているので、笹蟹百合なのかもしれない。
 英語名はスパイダーリリー(Spider lily)、蜘蛛のような形の百合ということ。日本人の目に蟹の足に見えたものが、西洋人には蜘蛛の足に見えたということ。ところがどっこいしょ。細蟹を広辞苑で引くと、「蜘蛛の異称」とある。東西、通じていたわけだ。
 陽光地を好み、日向にあるとよく花をつけてくれる。ユニークな形をした大きな白い花はバニラに似た芳香を放つ。開花期は3月から11月。
 記:島乃ガジ丸 2005.9.25  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
inserted by FC2 system