ルリフタモジ
 今のアパートに越してからの馴染みの散髪屋は、歩いて2、3分の所にある。もう11年通い続けている。親父はアウトドアの大好きな、家族を大切にするオジサン。キャンプはいつも家族と一緒。最近、孫ができて、目尻に皺が増えた。
 その散髪屋の入り口傍に長さ60cm、奥行き20cmくらいの小さな花壇があって、毎年夏から秋にかけてきれいな薄紫色の花を咲かす植物が植えてある。細い葉を下にして、花は上部に群れて咲くので、上から見ると、花を敷き詰めたように見える。その植物の名前を訊こうと思いつつ、いつも忘れていた。どちらかというと集中型の私は、同時に多種類のことを考えられない。散髪屋へ行くと、散髪以外の事を忘れがちになってしまうのだ。

 そうこうして数年が過ぎたある日、今から1年ほど前のことだったか、職場に同じ花の鉢植えがあるのを発見した。職場には植物に関する本がいろいろあるので、さっそく調べる。・・・ルリフタモジであった。花の色を瑠璃色と見てのルリとは判断できるが、二文字は何を指しているのか判らない。後日、よく行く喫茶店の、常連客のオバサン連中に訊いてみた。オバサンたちは二文字どころか、ルリフタモジそのものを知らなかった。なあんだ、世間的にもそう有名な花じゃ無いんだ、と、自己の不明を妥当化する。
 出勤の際はデジカメを携帯しているので、職場のルリフタモジはカメラに収めた。2ヶ月ほど前まで散髪屋のルリフタモジは満開だった。散髪屋へ行くたんびに、写真撮らなきゃと思いつつ、カメラをいつも忘れる。この忘れっぽさは、もしかしたら集中型の脳のせいでは無く、ただ単に、脳が老化したせいなのかもしれない。

 ルリフタモジ(瑠璃二文字):草本
 ユリ科の多年草 原産は南アフリカ 方言名:無し
 葉はニラの形に似ていて、草全体もニラを大型にしたように見える。傷つけるとニンニクの匂いがする。その葉の間からすすっと花茎を伸ばし、茎の頭部に花をつける。花は放射状に十数個あって、一つ一つの花は星型に開く。色は薄紫。花期は5月から10月。
 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花と美人を形容する言葉があるが、細身のすらっと伸びた八頭身のルリフタモジが、今時の美人の立ち姿であろう。しかも可憐で清楚な花だ。「あなたはルリフタモジのようですね」なんて、たいそうな褒め言葉になると思うが、ルリフタモジを知らない女性は多いようなので、褒めるその効果は期待できない。

 花
 記:島乃ガジ丸 2004.12.22  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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