オニヤブソテツ
 父は七十歳を過ぎてから体が弱ってきた。毎年の墓掃除も難儀と感じるようになったようだ。そのため、4、5年前からは私一人で墓掃除をしている。蔓延った雑草を刈取り、掃き掃除をし、ゴミを捨てる。2時間ばかりかかる。シーミーの頃はさほどでもないが、旧暦七月七日は真夏である。午前中とはいっても沖縄の真夏、2時間でたっぷりの汗をかく。水筒が必要であり、そして、着替えのTシャツも必要である。
 その七夕の掃除の日に、我が家の墓へ行く道の、途中の他家の墓でオキナワウラボシを見つけた。それは、「これは図鑑で見たことがある」と認識でき、帰ってから図鑑を開いて、オキナワウラボシという名前であることを確認したものである。そしてその時、その図鑑でオニヤブソテツなるものも同じ環境下で自生していることを知る。
 このところ毎週1回、墓を訪れていて、その際に、辺りを歩き回ってオニヤブソテツを探している。が、まだ見つかっていない。鳥が実を食べて、遠く離れたところで糞をして、その糞に含まれている種がそこで芽吹く、そうやって、あちこちの場所に仲間を増やしていく植物は多くあるが、胞子で増えるオニヤブソテツにはそういうことができない。よって、無いところには無い、ということなのかもしれない。

 オニヤブソテツ(鬼藪蘇鉄):根締め・添景
 オシダ科の常緑多年生シダ 北海道南部以南、南西諸島などに分布 方言名:不詳
 オニヤブソテツの名前の由来は、参考にしているどの文献にも資料が無くて不明。鬼藪蘇鉄という漢字は広辞苑にあった。ソテツはソテツ科の常緑裸子植物で本種とは関係ないのだが、見た目が似ている(私は似ているとは思わない)ということなのであろう。鬼のように猛々しいかどうかについても、私とは見解の相違がある。
 高さは1メートルほどになる。葉は厚く光沢があり、長さは30から60センチ。1回羽状複葉で、胞子嚢は葉の裏に多数散在している。
 海岸近くの岩場に自生するとあったが、私は自然のものをまだ見たことが無い。民家の庭で2、3度見ているが、どれも高さ50センチ程度で、こじんまりと庭の片隅に収まっていた。庭石の横にちょこんとあると良い趣の景色になりそう。

 葉裏
 記:島乃ガジ丸 2007.11.6  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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