ニチニチソウ
 ウチナーグチ(沖縄口)では、犬のことをイン、猫のことをマヤーという。犬や猫のことをカワイく呼びたいときは、語尾にグヮーをつけて、イングヮー、マヤーグヮーなどという。犬ちゃん、猫ちゃんといったような意味となる。“ちゃん”と同様に、グヮーも犬猫だけでなく他の動物、植物、モノ、人の名などにつけることができる。藍ちゃんはアイグヮー、裕ちゃんはユウグヮーとなる。ウチナーンチュにとって酒はとてもカワイイものなので、「でぃっか、サキ(酒)グヮー飲みに行か」などと使ったりもする。
 グヮーは漢字で書くと小。カワイイもの、小さいものを表す。これを目上の呼称に使うと、今度は軽蔑のニュアンスが加わることになる。ウスメー(おじいさん)やハーメー(おばあさん)にグヮーをつけると、それぞれジジイ、ババアという意味になる。
 「サキやマーウティ飲むが(酒はどこで飲もうか)?」
 「ワン(私の)ヤー(家)グヮーんてぃ飲ま」といった会話で使われるヤーグヮーは、“小さな家”ということになる。“拙宅”、“侘び住まい”といったニュアンスもある。
 “小”は中国語でも使う。もちろん、向こうの方がはるかに歴史が古いので、おそらく沖縄の“小”は中国語を真似たのであろう。中国語では“シャオ”といった風な発音となり、よく知っている子供や若い女性を呼ぶときに「小林(シャオリン)」、「小王(シャオワン)」、「小陳(シャオチン)」などと使う。中国ではこのように、姓名の名では無く、姓のほうにつけるらしい。陳さんとこのかわいい子、といった感じになるのかもしれない。

 植物のニチニチソウ、ウチナーグチ(沖縄口)ではカジマヤーグヮーという。カジマヤーは風車(かざぐるま)のことで、植物ではクチナシのことを指している。クチナシの花を風車(かざぐるま)に見立ててのこと。ニチニチソウの花がクチナシの花に似ているというわけでは無いが、ニチニチソウそのものは風車(かざぐるま)に似ているといっても間違いではない。AはCに似ていて、BもCに似ているが、AとBはさほど似ていない、というのはよくあること。ニチニチソウの花はクチナシのそれに比べてずっと小さい。よって、小さな風車(かざぐるま)といった意味で、カジマヤーグヮーとなっている。

 ニチニチソウ(日日草):花壇
 キョウチクトウ科の一年草 原産分布は西インド 方言名:カジマヤーグヮー
 広辞苑でニチニチソウは一年草とされている。が、職場のニチニチソウはもう何年もそこにあって、花を咲かせている。『沖縄園芸百科』に「暖かい沖縄では・・・多年草化します。」とあった。
 高さは60センチほどになるが、刈込んで低く抑えることができる。刈込めば分枝も多くなり、花数も増える。赤、桃、白、紫などの花色。開花期は周年だが、真夏が盛り。
 毎日新しい花を咲かすのでニチニチソウという名前らしい。方言名のカジマヤーグヮーは漢字で書くと風車小、小さな風車(かざぐるま)ということになる。クチナシのことをカジマヤーといい、花の大きさがクチナシより小さいので、ということだろう。

 白花
 記:島乃ガジ丸 2005.4.17  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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