ミドリカタヒバ
 もう何年も倭国への旅をしていないが、九州でも四国でも他の地でも山を歩くと、ここは沖縄では無いと認識できる景色が広がる。沖縄にはほとんど無い杉林、または、沖縄には無いと思われる檜林だ。すくっと真っすぐ伸びたのっぽの林は沖縄に無い。
 その林を歩くと、スギは、おそらくテレビなどでよく見ていたせいか、私でもそれがスギだと認識できるが、ヒノキについては、その特徴を上手くつかめないせいか、「これはヒノキである」としっかり認識することができない。

 前に紹介したヒリュウシダの頁で、「シダ類もイネ科と同じく見た目似ているものが多く、そのフォルダの中には10種余の写真が収められている・・・何者か不明のまま放っておかれている」と書いたが、その中で一つだけすぐに何者か判明したものがある。それが今回紹介するミドリカタヒバ、葉の形が他のシダとは違うのですぐに判った。
 ミドリカタヒバのヒバは桧葉、つまりヒノキの葉ということだが、上述したように私は確信を持って「これはヒノキ」と認識したことが無いので、ヒノキの葉をイメージすることができない。ミドリカタヒバの葉は、上述したように特徴的な形をしているが、それがヒノキの葉に似ているかどうかは、したがって、私には確信を持って言えない。

 ミドリカタヒバ(緑片桧葉):鉢物
 イワヒバ科の多年生シダ 屋久島以南の南西諸島、他に分布 方言名:不詳
 名前の由来、カタヒバ(片桧葉)が広辞苑にあった。本種と同じイワヒバ科のシダ。カタヒバの葉は黄緑色だが、本種は「葉は濃い緑色」ということで、ミドリ(緑)と付いたものと思われる。カタヒバについては、カタ(片)は「整わないこと」(広辞苑)でヒバ(桧葉)は「ヒノキの葉」(〃)のこと。ヒノキは沖縄に産しないので、正しいかどうか自信は無いが、形の整わないヒノキの葉に似たものという意だと思われる。
 『琉球弧野山の花』にはミドリカタヒバという名ではなく、別名のオニクラマゴケで載っていた。クラマゴケは広辞苑にあり、鞍馬苔という漢字表記で同じくイワヒバ科の多年生シダ。鞍馬は京都にある地名、そこに多く見られたということかもしれない。本種はクラマゴケより大きい、または荒々しく感じられるので鬼が付いたのかもしれない。
 山地の林下に生える。茎は多く分枝して直立、または斜上し、全体がこんもりとした形状となる。複葉は長楕円状菱形で、背葉は卵状被針形で独特な形状をしている。その通り独特な形なので、私でもすぐに何者か判明させることができた。

 葉
 記:島乃ガジ丸 2013.10.25  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
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 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
 『藤田智の野菜づくり大全』藤田智監修、NHK出版編
 『やんばる樹木観察図鑑』與那原正勝著、ぱる3企画発行
 『熱帯の果実』小島裕著、新星図書出版発行
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