マツバボタン
 アパートの隣の部屋には若い女性が住んでいる。かわいい人である。去年の春に越してきているので、隣人となってもう1年以上が経つが、顔を合わせ、挨拶したのは10回もあるかどうか、話をしたのは1回しかない。家にいるとき、外に出るとき、ゴミを出すとき、などの生活の時間が違うみたいである。
 アパートは、築40年以上は経っていて、私の部屋などは台所の床が抜けそうになっているくらいボロ。風呂場はトイレと一緒になっていて、風呂桶はなく、シャワーのみ。トイレも和式で、当然、ヲシュレットなどというものはついていない。そんなボロアパートに若い女性が住むなんて不思議に思うのだが、彼女はちょっと変わっている。
 彼女は車とバイクを持っている。車もバイクも、およそ若い女性が好んで使用するようなものでは無い。ボロの軽バンに、もっとボロのスーパーカブ。「見てくれはどうでも、中味が大事」というポリシーを、彼女は持っているのかもしれない。
 彼女自身もまた、部屋の中ではボロを着、化粧はせず、髪もバサバサなままなのかもしれない。「見てくれはどうでも」なのかもしれない。もっとも、私と顔を合わせた時の彼女は、概ねお出かけのときで、スリムな体型にセンスの良さが伺える服をピシッと着こなして、「どう、これが私の真の実力よ」と言っているみたいである。

 花の咲いていないマツバボタンは、まったく地味な植物である。日が照っていないときは花を開かないので、地味である時間は割りと長い。けれども、いったん花開けば、それはまさに華やかで、「どう、これが私の真の実力よ」と言っているみたいである。

 マツバボタン(松葉牡丹):花壇・鉢物
 スベリヒユ科の多年草 原産分布はブラジル 方言名:なし
 松葉のように細い葉と牡丹のような形の花からマツバボタンという名。日が照る間だけ咲いているところから日照草との別名もある。園芸店ではポーチュラカという名。
 松葉とは言うが、松葉ほど細くなく、松葉の長さには遠く及ばない。多肉質で2〜3センチほどの長さである。花の大きさも3センチほどしかないが、葉の大きさ、草丈に比べればそれでも大きく感じられ、全体としては花が目立つ。
 温乾燥に強く、低温過湿には弱い。日が照っているときだけ開花し、夕方や雨天時には開花しない。品種が多く、花には八重咲き、一重咲きがあり、色も紫、紅、黄、白、橙、絞りなど豊富にある。品種によっては夕方まで咲き続けるものもあるようだ。
 「花の大きさも3センチほど」と先述したが、これもまた、品種によっては6センチほどになる大輪種もあるとのこと。草丈は10センチ程度。

 花1

 花2
 記:島乃ガジ丸 2006.5.22  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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