クンシラン
 「袖摺り合うもタショウの縁」を私は「多少の縁」と覚えていた。「出会いがあれば、多少は縁のある仲」という意味であると思っていた。正確には、タショウは多生、または他生と書き、「生れ出る前からの多くの生を経る間に結ばれた因縁。前世からの因縁。」(広辞苑)とのこと。さらに、「袖摺り合う」では無くて、正しくは「袖振り合う」なのであるが、その意味は「互いに触れる」ということで、私の間違った認識と一致する。
 このように間違って覚えてしまった諺は、他にもいくつかあるが、歳取るうちに、しだいにその間違いに気付いて、今では、「おいおい、そりゃあ意味が違うぜ。」などと威張ったりもしている。本当はしかし、威張ってはいられないと思う。まだまだ、勘違いして覚えてしまっている諺は多くあるに違いないのである。諺だけでなく、言葉の覚え違いも多くあるに違いない。知ったかぶりするオジサンになっているかもしれない。

 「君子は豹変す」を「考え方や態度が急に一変する」(広辞苑)と私は覚えている。それはその通り広辞苑にもあるので、間違ってはいないが、しかし、元々の意味は、「君子は過ちがあればすみやかにそれを改め、鮮やかに面目を一新する」(広辞苑)ということらしい。良い意味なのである。今回調べるまで私は、「社長(などの偉い人)は自分の都合によって、社員の意向を無視して考え方を急に変える。君子は豹変だ。」などと悪い意味で使うものであろうと認識していた。
 これはこれは、と私はほくそ笑む。「考え方や態度が急に一変」した人を指して、「まるで『君子豹変』だな」と言う人に、「いやいや、君子豹変は、元々は良い意味だったんだよ」と言って、威張ってやろうと思う。威張る・・・うーん、君子とはほど遠い。

 クンシラン(君子蘭):花壇・鉢物
 ヒガンバナ科の多年草 原産は南アフリカ 方言名:なし
 ラン科では無いのだがランと名がつくものにスズランやハランがあるが、それらはユリ科。本種もまたランとつくが、ラン科ではなく、こちらはヒガンバナ科。いずれも全体や葉の形がランに似ているということなのであろう。
 君子は「人格が立派な人。徳が高くて品位のそなわった人。品位の高い人」(広辞苑)といったようなこと。よって、クンシランは、君子のように上品で、ランに似た植物ということ。そうであるかどうかは個人の感性による。それほどでも、と私は思う。
 高さは50センチほど。花の色は赤橙色で、筒状をしている。品種によって、上向きに咲くもの、下向きに咲くものがある。春に開く。
 ちなみに、スズランとハランについて少し。

 花

 スズラン(鈴蘭)
 ユリ科の多年草
 スズランと聞くと北海道を連想する。その通り北方系の植物で、沖縄には分布しない。おそらく生育もしない。私は沖縄でスズランを見たことが無い。
 晩春に白色の小さな花を総状につけるとのこと。花には芳香があり、果実は香水の原料にもなるとのこと。キミカゲソウという和名がある。

 ハラン(葉蘭) →記事
 ユリ科の多年草
 最近のものはプラスチック製であるが、弁当の中にあるギザギザのある緑色の敷物はハランに似せたもの。昔(料亭などでは今でも)は本物のハランを使っていた。長く広い葉はきれいな緑色をしており、そういった用途に使われるのであろう。
 きれいな葉は生花にも用いられ、また、庭園植物としてもよく使われる。
 記:島乃ガジ丸 2007.1.15  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
inserted by FC2 system