コウライシバ
 民家の庭や公園の広場などで多く見られる芝、目にする機会はとても多い。だが、「そこに芝がある」という認識は、「そこにタンポポがある」、「そこにヒマワリがある」、「そこにハイビスカスがある」といった認識よりも薄い。「あっ、芝だ!」と感動することはあまり無いので、芝を「芝だ」と認識する頻度は少ないのだろう。ということで、ガジ丸HPでも地被類植物の代表といえる芝を紹介するのが遅れた。

 芝と言って頭に浮かぶ名前は先ず、コウライシバ。日本芝と呼ばれるものの一種で、沖縄では、イヌシバが西洋芝の代表なら、本種が日本芝の代表と言える。
 学生の頃、一年ほど国分寺に住んでいた。国分寺駅から一駅目だったか二駅目だったか、路線名も国分寺線だったか違う名前だったかはっきり覚えていないが、西恋ヶ窪という駅、そこから徒歩5分ほどのアパート。そのアパートのすぐ近くに芝畑があった。
 芝は冬になると葉が枯れた。これもはっきりした記憶では無いのだが、確か、枯れると焼かれた。葉は枯れて焼かれたが、それでも根は生きているようで、春になると芽吹きだし、しだいに青々とした芝の絨毯となった。
 沖縄ではそういうことは無い。日本芝の生育適温は23度から35度とのこと。沖縄の冬だって一応は寒い、23度は春秋の最低気温といったところで、冬は沖縄といえど10度近くまで下がる。それでも沖縄の芝は青々としている。何故か、正確なところは不明だが、たぶん、太陽のお陰だと思う。冬といえど、沖縄の太陽はなかなかのもの。

 なお、コウライシバはヒメコウライシバ、コウシュンシバ、ノシバなど見た目似ているのが多く、素人の私にはその判別が難しい。

 コウライシバ(高麗芝):地被
 イネ科の常緑多年草 五島列島以南、南西諸島、台湾、他に分布 方言名:アシジリ
 シバの名の由来については「本来は繁草の意・・・云々」とあったが、シゲクサが何でシバになったのかは不明。繁葉であればシゲハからシバになるかもしれない。
 高麗は朝鮮のことで、「朝鮮方面からやってきたもの」という意味となる。沖縄にも自生するのだが、倭国へは朝鮮から渡ってきたということなのであろう。
 方言名は分かり易い。アシジリは足擦りの沖縄訛り。沖縄の海岸に自生し、古くから足を擦ってきたのだろう。「海岸に」ということからハマアシジリとも言う。
 非常に葉が細く、溝があって管状に巻いている。別名にキヌシバ、イトシバとあるが、それはその特徴から前者は絹芝、後者は糸芝ということ。ヒメコウライシバという名もよく聞くが、本種の変種で、さらにきめ細かいとのこと。素人目には判別が難しく、これがヒメコウライシバと自信を持って紹介できる写真は無い。変種には他に、コウシュンシバがあるとのことだが、これも判別が難しく、紹介不能。
 草質はやや柔軟で、踏圧に強く、耐病性がある。刈込みを続ければ葉はさらに小さくなり、年に5、6回の刈込と、雑草の進入に気を付ければ見事な緑の絨毯となる。
 花は白色、穂状の先につく。開花期は周年だが、刈込まれて花を見る機会は少ない。

 花
 記:島乃ガジ丸 2009.12.7  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
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