コモスス
 ダンパチヤーを探している。以前住んでいたアパートの近くには昔ながらのダンパチヤーがあって60代の親父さんが昔ながらのダンパチをしてくれた。
 ダンパチヤーとはウチナーグチ(沖縄口)で断髪屋のこと。だが、改めて広辞苑を引いてみたら、断髪屋という言葉は無い。断髪はある、「毛髪を短く切ること」。ダンパチヤーは散髪屋のことを指しているが、日本の標準的な表現では断髪屋は無く、床屋、理髪店とか言うようだ。確かに、洒落た理髪店にダンパチヤーという言葉は似合わない。
 新しい住処の近辺にはダンパチヤーと呼べるような古い散髪屋は見当たらない。あるいはまだ探せていない。で、引っ越し後もしょうがなく、遠く離れた前のアパートの近く、18年もの馴染みであったダンパチヤーに髪を切りに行った。
 その店では、親父さんとも女将さんとも世間話をよくする。二人ともアウトドアが好きなのでキャンプの話などをよくする。また、二人とも植物が好きなので、庭に植えられてある植物の話などもよくする。「これ、何て言う名前?」と女将さんから質問され、写真を撮って、調べて、後日報告するということも何度かあった。

 コモスス、耳慣れない名前で、私が参考にしているほとんどの文献には記載が無く、観葉植物を紹介している文献にのみあった。だけどもう、私はその名を覚えた。別の場所で見たとしても「あー、ダンパチヤーの黄色い花だ」と思い出せるだろう。

 コモスス(comosus):花壇・鉢物
 ショウガ科の多年草 中南米原産 方言名:なし
 「いつものように煙突から入ったんだけどね、その家の煙突が煤だらけでさ、赤い衣装が煤だらけになっちまってよ、そんな体にその家の子が『あっ、サンタクロースだ』って飛び付いてきたんだ、そしたらその子も煤だらけになっちまったんだよ。」ということでコモスス(子も煤)、なんてエピソードは無い。コモススは学名から。
 高さは3mほどにもなるとのことだが、そんな大きなものを私は見たことが無い。私が見たものは1mから、せいぜい2mほどのもの。
 いかにもショウガ科らしい大きな細長い葉を、茎の周りに輪生させ、その茎の先に花穂を付ける。花穂は苞葉がいくつも重なったもので赤い。重なった苞葉の間から黄色い花をちょこちょこといくつか出す。開花期、沖縄ではほぼ周年。

 花
 記:島乃ガジ丸 2011.11.28  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
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