コゴメミズ
 天変地異が起きて、あるいは大戦争が起こって通常の生活が出来なくなった時、街中へは居られなくなって、食料などが周りから消えて、お金が何の役にも立たなくなって、どこかへ長く潜んでおかねばならない時、私はたぶん、山へ逃げる。
 山の洞窟を探し、そこへ潜む。山なら、野生の植物にいくらか食える物がある。食料はそれでたぶん何とかなる。水だって、洞窟の奥には地下水があったり、湧水があったりすることが多い。沖縄にある鍾乳洞も、たいてい奥に行けば水がある。
 私の潜んだ洞窟、耳を澄ませば奥から何やら水滴の落ちる音がする。で、奥へ進む。進むにつれ洞窟は狭くなっていく。屈まないと歩けないほど天井も低くなってきた辺りで水に出会えた。水は体を屈めないと飲めなかった。これを屈め水という。
 
 屈めるは「かがめる」と普通読むが、「こごめる」とも読む。したがって、屈め水は「こごめみず」とも言う。コゴメミズ、その名の由来はその辺りからきたのではないかと想像したのだが、全然違っていた。そりゃあそうだろう。コゴメミズは、天変地異などの非常事態でなければ見つからないような希少種、というわけではないみたいだ。

 コゴメミズ(小米みず):野草・地被
 イラクサ科の一年草 方言名:不詳
 名前の由来は資料が無く不明。コゴメについては小米と漢字を勝手に充てたが、コゴメウツギとかコゴメヤナギとかどれも漢字表記は小米で、いずれも「(花が)米粒のように小さい」という意味で付けられていると思われる。
 ミズについては広辞苑に記載はあるが、漢字表記は記されていない。イラクサ科の中にミズ属があって、同属の植物は日本にも数種が自生し、その一種ミズが広辞苑にもある。「イラクサ科の一年草。アジア東部に分布し、日本各地の湿った原野や川沿いに群生」とのこと。ミズ属は学名だとピレア(Pilea)属といい、その名は私にも記憶がある。観葉植物の鉢物で見たことがある。本種同様、匍匐性のものが多かったと思う。
 茎が多数分枝して匍匐するように横に広がる。茎に小さな葉を多くつけ、全体にこんもりとした形になる。葉は多肉質で柔らかい。高さは5〜10センチ。
 日本に自生するミズは食用になるらしいが、本種は食用との記載は無い。文献の写真には無いが、私の写真には花が着いている。ごく小さな花、写真は5月。
 記:島乃ガジ丸 2014.2.20  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
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 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
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 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
 『藤田智の野菜づくり大全』藤田智監修、NHK出版編
 『やんばる樹木観察図鑑』與那原正勝著、ぱる3企画発行
 『熱帯の果実』小島裕著、新星図書出版発行
 『熱帯花木と観葉植物図鑑』(社)日本インドアグリーン協会編、株式会社誠久堂発行
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