カワラナデシコ
 数年前に渡名喜島を訪れたとき、村の教育委員会の職員に島を案内された。リュウキュウマツの多くが枯れてしまったこと。それがマツクイムシのせいでは無く、台風でやられてしまったという話を、マツの無残な姿が目立つ山を眺めながら語ってくれた。
 その職員は植物に興味があるらしく、他の植物についてもいろいろ話してくれた。特に熱心だったのはサクナとカワラナデシコ。サクナは既に紹介済みだが、ボタンボウフウのこと。別名をチョウメイグサ(長命草)といい、健康に良いとされている薬草。渡名喜島にはサクナの自生が多くあり、これを島の特産にしようとのことであった。
 もう一つのカワラナデシコ、私は初めて聞く名。ナデシコなら知っているが、そういうナデシコの種類もあるんだな、とその時は思った。カワラナデシコは隣の久米島と、ここ渡名喜島にしか自生が無いということで、これも島の特産にしたいとのことであった。サクナは健康食品としてお茶やお菓子にでもなり、カワラナデシコは鉢物にしたり、そのデザイン画を島のロゴかなんかにするということなのであろう。島の発展を強く願う、なかなか、郷土愛の強い教育委員なのであった。

 カワラナデシコ(河原撫子):花壇・切花
 ナデシコ科の多年草 分布は本州から久米島、渡名喜島、他 方言名:不詳
 ナデシコを広辞苑でひくと、別名としてカワラナデシコとあった。ナデシコは本種の名前でもあるが、「ナデシコ科の一群の草本の総称」(広辞苑)でもあるとのこと。文献には、ナデシコという項目は無く、カワラナデシコという名前で紹介されてあった。ナデシコの由来は「撫でたくなるほど可愛い子供のような」ということらしい。河原に多く見られるのでカワラナデシコという別名。また、トウナデシコ(セキチクのこと)に対してヤマトナデシコとの別名もある。大和撫子と書くが、あの大和撫子と関係あるのか不明。
 草地や河原の日当りの良い場所で多く見られる。沖縄では久米島、渡名喜島に自生している。渡名喜村では村の花に指定されている。
 高さは30センチほど。根元から数本の茎が出て、その先、または葉の脇に花がつく。花色は淡紅色から白色。沖縄産は白色が多いとのこと。開花期、広辞苑には8月から9月頃とあった。本土ではそうなんだろう。沖縄では5月から6月。秋の七草のひとつ。
 記:島乃ガジ丸 2006.8.1  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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