カネノナルキ
 貧乏人の私から4月に金を借りて、未だに返さない不届き者のMが、「自分で増やして育てているんだ。一つプレゼントするよ。」と言って、小さな鉢の観葉植物をくれた。3年ほど前のことである。名前は「カネノナルキ」だと言う。思えば、その頃から彼は金に困っていたに違いない。「カネノナルキ」に幻想を抱いていたのかもしれない。
 カネノナルキは「金の生る木」と書くが、現実にそういう樹木は無い。ただ現実に存在するものを喩えて「金の生る木」と言うことはある。「金銭を絶えず引き出し得る財源」(広辞苑)のこと。大金持ちの娘は、親の財産をそう思っているのかもしれない。社会保険庁の一部の職員は、国民の年金をそう捉えていたのかも知れない。
 フリーター生活の多かった私は、仕事の無い期間は当然、金に困っていた。ただ、両親と同居していたので食う寝るはできていた。遊ぶに困っていた。若い頃である。大人の夜の遊びをしたい盛りである。我慢した。今の私は、日本国の平均から見れば貧乏人だが、慎ましい生活をしているので、金に困ることはあまり無い。大人の夜の遊びをする余裕も多少はある。しかし、残念ながら、今はもうその意欲が失われている。

 母の告別式で、倭国から弟夫婦、伯母、叔父、甥、姪などがやってきた。そのうち、弟夫婦、伯母をその帰る日に空港まで送っていった。弟の女房が別れ際、「お世話になりました。これ、取って置いてください。」と言って、私のシャツの左ポケットに1万円札を入れた。遠慮しつつ頂く。翌日、伯母を送っていった時も別れ際、同じシャツの同じポケットに同じことをされた。私のポケットは、金の生るポケットみたいであった。

 カネノナルキ(金の生る木):鉢物
 ベンケイソウ科の多年草 南アフリカの原産 方言名:不詳
 カネノナルキ(金の成る木)は流通名で、学名はクラッスラ・アルゲンテア、和名はアデスガタ(艶姿)と『原色観葉植物写真集』にあった。同属のカゲツやフチベニベンケイなども含まれる場合がある。以前、園芸店で枝に五円玉の付着した本種の鉢物を見たことがある。もちろん、五円玉は人工的に付着させたもの、五円玉が成っているように見せかけたもの。カネノナルキだからそうしたのか、だからカネノナルキなのかは不明。
 本種はベンケイソウ科クラッスラ属に含まれる。ベンケイソウ科には他にマンネングサ属(セダム属)、リュウキュウベンケイ属(カランコエ属)などがある。それらの仲間たちの多くが多肉植物であるが、本種も同じく葉が厚い。
 私は鉢植えのものしか見たことがなくて、どれも高さ10から50センチのものであった。ところが、文献によると、高さは1〜3メートルにもなるらしい。大きくなると幹が木質化するらしい。おそらく、露地植えにした場合のことであろう。それほどのものを見たことは無いが、ユッカのような立ち姿なのではと想像する。ちなみに学名、
 アデスガタ(艶姿)Crassula argentea
 フチベニベンケイ(縁紅弁慶)Crassula portulacea
 カゲツ(花月)はその変種で、Crassula portulacea var.obliqua

 Mからの贈り物
 2013.11.22訂正加筆
 記:島乃ガジ丸 2007.11.6  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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