カクチョウラン
 去年(2009年)、いつものカメラ片手の週末散歩で、いつものように民家の庭に咲く花の写真を撮りながら歩いていると、刑事に職務質問された。その近辺の家から、不審者がいると通報があったのかもしれない。それ以降、民家の庭の写真を撮る時は、なるべくその家の人に「写真を撮ってもいいですか?」と許可を得るようにしている。
 家を出て、石嶺小学校の裏門から入り、正門を抜けて図書館へ向かう。その道はスーパーNへ買い物に行く道でもあり、月に2、3回程度は通る道。
 家から小学校の裏門までは100メートルに満たない道のり。4月の初め、その中間あたりに位置する民家の庭が雰囲気を変えていた。道の傍の塀沿いに植えられていた数本のカイヅカイブキが撤去され、庭が広く見渡せるようになっていた。
 広く見渡せるようになった庭は、チラッと見ただけで全体が見えるほどの小さな庭であったが、きれいに手入れされていた。そこにカクチョウランと思われる(図鑑の写真を覚えていた)植物の花が咲いていた。庭の奥の方にその家の人がいたので声を掛けた。「その花、きれいですね、何と言うのですか?」と訊いた。しかし、家の人は名前を知らなくて、「ヤンバルの知人から貰ったもの」とだけ。で、写真を撮らせてもらい、確認する。私の記憶は正しく(まだボケていない)て、確かにカクチョウランであった。
 「良かったら一株、貰っていって。」と家の人は言ってくれた。声を掛けるとこんないいことまであるんだと思った。花が終わった頃に貰いに行こう。

 カクチョウラン(鶴頂蘭):添景
 ラン科の多年草 種子島、屋久島以南、琉球列島などに分布 方言名:不詳
 名前の由来についての資料は無いが、『沖縄四季の花木』に鶴頂蘭とあった。鶴のような頂(いただき)をした蘭ということなのだろうか、確かに、長い花茎の上に花が付いている様はそのように見えないこともない。詳細は不明。
 沖縄に自生していて、花が目立つので、古くから沖縄の人々にも知られていたはず。なので、方言名もきっとあるはず。しかし、どの文献にも記載が無く、方言名は不明。
 明るい林内や草原に生える大型の地生ラン、地際からハランの葉に似た大きな葉を数枚出し、その間から長さ1mほどの花茎を伸ばす。
 長い花茎の先に、径10センチ程の花を10〜20個つける。花弁の裏側は白、表側は茶褐色、唇弁は赤紫色の美しく、大きな花、開花期は3〜4月。ラン科の花は概ね長持ちするのだが、残念ながら本種の花は4、5日で退色するとのこと。

 花
 記:島乃ガジ丸 2010.4.25  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
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