イソノギク
 『野菊の墓』は確か、何とか道雄・・・フユー(面倒臭がる)しないで調べる。道雄でもなかった、伊藤左千夫だ。その名作で、私も中学生の頃に読んでいる。読んだことは覚えているが内容については、恋愛小説だったかなぁという記憶しかない。
 傍らに野菊の咲いている墓がある。そこに袴姿に学生帽を被った学生と着物姿の美少女が立っている、なんて映像が浮かぶ。ん?これは川端康成の『伊豆の踊子』が混ざってしまったかな。まあ、とにかく、野菊と聞くと何か甘酸っぱい感じがする。

 過日、海洋博公園を訪れた際、ある建物(名前忘れた)の前にイソノギクが鉢物として展示されていた。野菊と名の付く植物に出会ったのはこれが初めてではない。だいぶ前にアレチノギク(荒地野菊)とオオアレチノギク(大荒地野菊)に会っている。それらがどんな花だったかもう記憶にない。たぶん、記憶に残るほどの花では無く、それらから甘酸っぱい感じも私はたぶん受けなかったと思う。ところが、イソノギクは、可愛いと思い、清楚な感じを受け、『野菊の墓』を連想し、着物姿の美少女(『伊豆の踊子』の混同かもしれないが)も連想し、何だか甘酸っぱい感じを受けたのであった。
 ちなみに野菊とは「野に咲く菊」のことで、「ノコンギク・ノジギクなど」と広辞苑にあった。「野に咲く菊」ならば当然、イソノギクも野菊となる。

 イソノギク(磯野菊):下草
 キク科の多年草 奄美や沖永良部や沖縄島の一部に分布 方言名:不詳
 名前の由来については資料が無く不明だが、だいたいの想像はつく。野菊は「野に咲く菊」(広辞苑)のことで、本種は磯が生息地なのでイソノギク(磯野菊)となる。ちなみに、イソギク(磯菊)という別種があって、それは花色が黄色。ついでに、ノジギク(野路菊)という種もあり、海岸が生息地で花色は白。本種の花色は白か淡青紫。
 茎が多く分枝して地上を這い、茎の所々から根を出して広がる。茎長は15〜50センチ。茎の先は斜めに立ち上がって、高さは30センチほどになる。
 花は茎の先端に着き、いかにもキクの花の形、色は白、または淡青紫色で、開花期は4月から8月。海岸の岩場に生息する。琉球列島の固有種。
 ちなみに学名、
 イソノギク Aster asa-grayi
 イソギク Chrysanthemum pacificum
 ノジギク Chrysanthemum japonense
 ということで、イソギクとノジギクは同属だが、イソノギクはアスター。

 花
 記:島乃ガジ丸 2011.8.15  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
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