イ/ビンゴイ |
2008年の秋、宮崎から遊びに来ていた友人Iを海洋博公園に案内し、彼がちゅら海水族館を見学している間、私は公園内の散策をした。 施設の中に有用植物を紹介している一角があった。海洋博公園はもう何度も訪れているが、このような施設があることは初めて知った。そこには数種類の植物が植えられていて、名札も付いていた。名札は助かる。自分の撮った写真と図鑑を見比べて何者であるかを調べるのは手間がかかる。名札があるとその手間が省ける。 名札の一つにイがあった。見た目はイネ科、小さなススキのような植物。イとは何ぞやとしばし考える。胃、亥、衣、医などの漢字が思い浮かぶが、名札の説明にイグサ科ともあったので、「あー、イグサのイか」とすぐに判明。ところが、イグサのイという漢字は全く思い浮かばない。後日調べると、藺とあった。初めて見るような漢字。 パソコンで文章を書くようになってから、手書きの時に思い出せない漢字が増えつつあるが、私は元々漢字の書き取りが苦手であった。中学の時、漢字書き取り100問のテストがあって、たった3点しか取れなかったという記録を持つ。藺がイであることは今回覚えたが、イグサのイを漢字で書けと言われても、きっと思い出せないであろう。 ビンゴイ(備後藺);畳表や花筵の材 イグサ科の多年草 温帯アジア原産 方言名:ビーグ 名前の由来は資料が無く不明。イ(藺)については想像もできないが、備後は広島県東部を指し、その辺りに産することからと思われる。畳表や花筵の材としては最良とされ、ただ単にイ、またはイグサと言えば本種を指すようである。びんごおもて(備後表)が広辞苑にあり、「広島県の尾道・福山地方から産出する畳表。古くからあり、品質最良とされる」とのこと。方言名のビーグはビンゴイが訛ったものと思われる。別名にトウシンソウ(灯心草)とあるが、茎の中に白い髄があり、髄は灯心に利用されることから。 高さは1mほど。湿地に自生し、材として水田で栽培される。葉は退化して茎だけが伸び、茎は畳表や花筵の材になる。5月から6月頃に花穂を出す。 |
記:島乃ガジ丸 2013.2.16 ガジ丸ホーム 沖縄の草木 |
参考文献 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行 |