フトイ
 私の若い友人A女は、生まれつきの骨の病気で身長が低い。彼女はその身長の数値を自らのメールアドレスに使っている。「自虐的じゃねーか」と言うと、「アハハ」と笑う。そんな彼女なので、過日、私の畑の小さなホウレンソウをあげた時、「十分大人だけどとても小さい、小さいけれど中味はしっかりしている、君のようなホウレンソウだ」と私も平気で言える。思ったことをそのまま言える、付き合いやすいA女なのである。

 「君の脚は太いね」と太った女性に言う。
 「そうなのよ、でも、生まれつきじゃないよ、高校卒業後にぶくぶく太ったのよ」と言って、カッ、カッ、カッと豪快に笑ってくれる女性なら私は付き合いやすい。しかしながら、世の女性にそのような人はほとんどいない。
 大宜味村喜如嘉にオクラレルカの花畑があり、開花期(4月頃)になると観光名所となる。オクラレルカは水田で栽培されており、その辺りは水田が広がっている。
 オクラレルカが目立つ中、水田の一角に目立たない花穂を付けている植物があった。同行の女性が「何かしら?」と訊く。彼女の脚が太くないことを確認して、
 「フトイ」と私は淡々と答えた。

 フトイ(太藺・莞);生花・むしろ材
 カヤツリグサ科の多年草 方言名:不詳
 名前の由来については資料が無く不明。イ(藺)はイ草(畳表に使われる)のイで、おそらく漢名だと思われる。フト(太)はそのままの意で、茎の太いイ(藺)ということであろう。ただ、見た目は似ているが、本種はカヤツリグサ科で、イはイグサ科。
 茎は細い円柱形で、高さは1〜2m。鱗片葉が根元にあるだけで通常の葉は無い。長く伸びた茎の先に花梗を出し分枝して数個の花をつける。花は淡黄褐色、開花期について文献には夏とあったが、私の写真は4月、沖縄では春から咲いているようだ。
 池沼などに自生するが水田で栽培されることが多い。栽培して生花の材料やむしろにする。生花の材料といっても花に観賞価値は無く、茎の直線の美しさが好まれている。
 茎はイ(藺)と呼ばれるが、イグサ科の藺とは別種。この茎で筵(むしろ)を編み、これをガマムシロと呼ぶとのこと。

 花穂
 記:島乃ガジ丸 2013.2.3  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『いけばな花材辞典』逸見旺潮編、東京堂出版発行
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