ホウライショウ
 私が大学生の頃、父と母は家を新築した。敷地は前の家と同じで、前の家を取り壊して新しい家を建てた。新しい家は敷地いっぱいに建物が建てられた。庭が消えた。前の家には小さいながらも庭と呼べる空間があった。植物も植えられていた。
 新しい家のデザインは母がやった。母は一応私にも相談した。が、「庭は必要だ」という長男の意見は無視された。他にもいくつか意見を出したがことごとく却下された。「一応」だったのだ、母は最初から息子の意見など聞く気は無かったと思われる。
 大学を卒業して沖縄に帰って、新しい家に住むことになった。土の無い家であったが、ベランダや屋上にいくつかの鉢物があった。父の趣味である。しかしそれも数えるほどしか無い。「この家には酸素が足りない」と私は感じた。
 そんなわけで、その頃私は観葉植物に興味を持った。その類の本を読み、実際にもいろいろ買って、ベランダや屋上、自分の部屋にそれらを置いた。

 そんなわけで私は若い頃から観葉植物の名前はいろいろ知っている。ベンジャミン、パキラ、アグラオネマ、ディフェンバキア、スパティフィラム、アンスリューム、ポトスなどは購入している。ガジュマルの鉢物は自分で挿し木して作った。
 購入はしていないが、自分で作ってもいないが、モンステラという名前もよく覚えている。葉の形が独特であるのと、その名前が怪獣みたいなので記憶に刻まれた。モンステラは、今回調べて初めて判ったが、和名をホウライショウという。ホウライショウは怪獣の名前から遠い。そんな名前であったなら私の記憶には残っていなかったはず。

 ホウライショウ(鳳莱蕉):鉢物・装飾
 サトイモ科の半蔓性多年草 南アメリカ原産 方言名:なし
 観葉植物としてはモンステラという名で知られているが、ホウライショウという別名もある。モンステラは属名から。ホウライショウの由来については資料が無く不明。鳳は鳳凰のホウで、「聖王の世に現れるとされる想像上の瑞鳥」(広辞苑)の雄の方。莱は莱草が広辞苑にあり「荒地に生える雑草」のこと。蕉は芭蕉のショウ。それらを足して考えると、「目出度き雑草で芭蕉のような大型多年草」ということだろうか。
 ホウライショウ(モンステラ)はその属に含まれる植物の総称で、観葉植物として多く見かけ、民家の庭(沖縄では露地でも生育する)でも時折見かけるのはモンステラ・デリシオサという種。地植えでは大きく伸びてジャングルの蔓植物に見える。
 茎から太い気根を出し、他のものに絡みついて伸びる。葉は特徴があり、大きく、中央部にまで達する深い切れ込みや、または、大きく孔が空いたりする。原産地がそうであるように高温多湿を好み、日陰でよく生育する。
 花は白く棍棒状、仏炎苞が大きくクリーム色をして良く目立つ。スパティフィラムのそれを大きく厚くしたような感じ。開花期について資料は無いが、私の写真は7月。
 果実は芳香があり食用になると広辞苑にあり、調べると『熱帯の果実』(小島裕著、新星図書出版発行)に「完熟させて生食、パインとバナナを足したような味」とあった。ただし、完熟していないと刺激があるとのこと。開花後一年ほどで熟すとのこと。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2011.10.30  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
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