ホウビカンジュ
 私の弟は運動神経に長けていて、小学校の体力測定で、50メートル走、走り幅跳び、ソフトボール投げ、その他の種目で全校一の記録を打ち立てた。
 弟とは正反対に、私は運動オンチであった。小学校の運動会のかけっこで、私は常にビリか、ビリから2番目であった。運動会は好きじゃなかった。弟と常に比較されて、兄は辛かったのである。中学3年になって、急に運動能力が発達して、リレーの選手に選ばれるほどになったが、それでも、当時小5の弟に勝てたかどうかは確信が持てない。少なくとも小学校6年の彼の記録に、高1の私はソフトボール投げで及ばなかった。
 私が23、4、弟が、・・・その頃飲みに行っているので20歳の頃、一緒にバッティングセンターへ行き、スピードガンで投げる球の速さを測った。渾身の力を込めて投げた私が100キロそこそこだったのに対し、弟は軽く投げて130キロ近くあった。弟の球の速さは実感していた。キャッチボールをする時、彼の投げる球は唸りをあげていた。

 褒美の冠を受けるなんてことを、弟は数え切れないほど経験しているが、私はかつて一度も経験が無い。今回紹介する植物、ホウビカンジュは、調べると鳳尾貫衆と書くのであったが、私は初め褒美冠受と連想して、そこから弟のことを思い出した。

 ホウビカンジュ(鳳尾貫衆):野草
 シノブ科の常緑多年生シダ 方言名:不詳
 ホウビは鳳尾と書き、「鳳凰(ほうおう)の尾」(広辞苑)のこと。鳳凰は「古来中国で、麒麟・亀・竜と共に四瑞として尊ばれた想像上の瑞鳥」(広辞苑)のこと。ホウオウボクはその花が鳳凰に見立てられているが、本種はその葉が鳳凰の尾のようであるよいうこと。鳳尾蕉というのが広辞苑にあり、「ソテツの異称」となっている。
 カンジュが何なのか、調べるのにちょっと苦労したが、カンジュウ(貫衆)という生薬があって、その原料となるものが数種のシダ植物で、本種もそれに含まれている。
 葉の長さは100〜150センチになる。海岸近くの岩壁や樹木の幹に着生し、垂れ下がる。胞子嚢は、葉裏の両側縁寄りに1列に並ぶ。
 大型のシダで密生するので、民家の庭には使いづらい。公園などの面積の広い壁面の緑化に使える。

 葉裏
 記:島乃ガジ丸 2008.1.5  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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