ホテイアオイ
 テレビドラマや映画など、あるいはニュース番組などでも、日本の日常の風景が映し出されるとき、そこにお寺や神社や、お坊さんや神主さんなどが普通に存在する。そういった素材が画面にあれば、そこは日本であるという認識が生まれる。そのくらいお寺や神社や、お坊さんや神主さんなどはいかにも日本的なものだと思う。
 そういったことがしかし、沖縄には当てはまらない。沖縄では、少なくとも私の近辺では、お坊さんは法事のとき、神主さんは地鎮祭のときくらいしかお目にかかれない。私が子供の頃は、そういった機会はもっと少なくて、その代わりユタと呼ばれる人たちに会うことが多かったと覚えている。ユタ(霊能力者、あの世と交信できる能力を持った人)についてはカミダーリー(神霊の与える病)と共にいずれ別項で詳しく述べるが、法事の際には坊さんの代わり、病気の際には医者の代わりとなっていた。
 というわけで沖縄は、仏教や神教の影響が希薄である。「神様、仏様」と祈ることは少なくて、「ウヤファーフジ(ご先祖)」に手を合わせることがずっと多い。トートーメー(仏壇)には神様も仏様もいない。ご先祖がいるだけである。道教の影響から来る独自の祖先崇拝の宗教観が、伝統として今なお多くのウチナーンチュの中に生き続けている。

 なもんで、倭国では高名な七福神が、沖縄ではメジャーとはなっていない。十分歳を取っている私でさえ、その7柱の神の名を全部は言えない。まあ、それでも、有名どころの大黒様、弁天様、蛭子様、布袋様くらいは知っている。大黒様は昔話、因幡の白兎から、弁天様は美女であることから、蛭子様はえびす顔という言葉から。そして、布袋様が、じつは最も古くから知っていて、それは植物のホテイアオイから知った。

 ホテイアオイ(布袋葵):池・水槽
 ミズアオイ科の多年生水生植物 熱帯アメリカ原産 方言名:ウチグサ
 池、沼などの水面に浮くが、池底の泥に根を張ることもあるようだ。葉柄の中央が鶏卵ほどの大きさに膨れ、浮袋となって水に浮く。その葉柄の形状から布袋という名がある。
 花茎は高さ30センチメートルほど。その先から穂状に花を咲かせる。淡紫色のきれいな花は、梅雨時の5月頃から秋にかけて咲いている。

 花
 記:島乃ガジ丸 2005.9.25  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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